日本貿易振興機構(ジェトロ)の基礎データによると、ベトナムの1~9月期の実質GDP成長率は前年同期比の4.7%。第1四半期の4.0%、上半期の4.38%と比べるとやや改善しているものの、前年同期の5.8%と比べると鈍化しており、「成長著しい東南アジア諸国」と言うには多少抵抗を感じるレベルとなっている。しかし、ASEANや欧米向けの生産・輸出拠点として、日本企業による進出は依然として活発である。
三菱電機は、ベトナム市場における産業メカトロニクス事業強化の一環としてベトナム総合販売会社「三菱エレクトリック・ベトナム社」内に、NC(数値制御装置)の部品の交換・販売などのアフターサービス業務を担当するNCサービス部門を2012年10月1日に新設。その背景として、ベトナムでは今後も、政府主導での電力・鉄道関連インフラ整備、住宅開発など大規模プロジェクトが計画されており、持続的な経済成長が見込まれることを挙げている。
またアイカ工業も、建設用樹脂製造子会社アイカベトナム社を設立、10月15日から稼働を開始するという。同社は中国及びアジア地域において海外売上高を飛躍的に高める計画を推進しており、今回の新会社設立に至る背景では、三菱電機同様「近年、経済成長の著しいベトナムは、(中略)市場拡大が期待され、今後さらに需要の増加が見込まれてい」ることを挙げている。
その他、JX日鉱日石エネルギーが潤滑油製造販売会社を設立。昭和産業は、ベトナムのプレミックス最大手Intermix社に資本参加及び技術協力をすることで合意するなど、連日のように日本企業の進出が発表されており、伊藤忠商事の子会社で保険ブローカー事業を手がけるSiam Cosmosが同国のバイク販売数で過半のシェアを持つホンダのバイクユーザー向けに保険を含む会員サービス事業を開始するなど、サービス業での進出も目立ってきている。
企業発表だけを見ていれば、他の東南アジア諸国同様の経済発展・好景気に見えるベトナムであるが、前出ジェトロによる経済動向のデータによると、強力な金融引き締め政策でインフレの抑制には成功したものの、国内需要は冷え込んだまま。不動産価格の下落から銀行は多額の不良債権を抱えており、下半期においても景気の本格的な回復は期待できそうにないという。さらに、2012年の成長率は過去20年間で最低水準まで落ち込む可能性もあるというから、企業の捉えている感覚とは随分かけ離れたものとなっている。今後、ベトナム経済そして進出した日本企業がどういった動向を辿るのか、注目に値するのではないだろうか。