5日、安倍晋三首相は、安倍政権による経済政策「アベノミクス」の第三弾を発表した。
今回の成長戦略で安倍首相は、1人あたりの国民総所得(GNI)を、現在より150万円以上増やすという所得目標を掲げ、また、企業の設備投資を促進する減税措置や規制緩和などを盛り込んだ。この第三弾の発表により、14日に正式決定する成長戦略の主要項目が出そろう形となった。
20年以上に渡る長期不景気から抜け出すための効果的政策となるか?大きな注目を集めた今回の発表だったが、こうして目標は掲げられたものの、それを達成するための具体策が提示されなかったことに対して、不満の声も上がっている。
特に経済界は、今回の政策に法人減税が盛り込まれていなかったことについて、不満の色を隠そうとしない。「経済成長を促す投資が実施出来るかどうかは、一律の法人減税が大きな鍵となる」と経団連は見ており、減税について政策では触れられなかったことに、「減税についての議論そのものがなくなってしまうのでは?」と心配する声も上がっている。
ただし、投資の対象を限定した政策減税に関しては、政府も検討すべき課題として考えており、5月28日の諮問会議後の会見で甘利明・経済再生担当相は、「日本の競争力強化に資するような研究開発や設備投資については、大いに検討していい」との発言をしている。
しかしこの発言についても経団連は、「目的や需要に縛られて新たな事業への投資への自由度が奪われる政策は、効果が一部の業界や投資項目に偏る」と懸念を表しており、必ずしも喜ばしい発言とは受け止めていないようだ。
しかしながら、財政の状況が厳しい中でそういった一律の法人減税を行うことに、甘利・経済再生担当相は「財政余力と相談」と発言しており、政府としても財政再建とのバランスに苦心している部分があることが伺える。
安倍首相は自身の「アベノミクス」に関して、一時的な効果では終わらせないと説明し続けて来ており、今回の発表の際にも、「目標を達成するまで政策を打ち続ける」と発言している。今回こうして具体性を欠き、また経済界から諸手を上げての歓迎とは至らなかったこの政策に関しても、今後議論が続けられ、見直しが行われる可能性は十分にありそうだ。(編集担当:滝川幸平)