世界的な半導体メーカー2社、フリースケール・セミコンダクタ(米国・テキサス)とローム(日本・京都)が手を結び協業に乗り出す。協業で世界の市場に送り出すのは「車載ソリューション」だ。フリースケールは車載用MCU(マイクロコントロールユニット)で世界第2位(2012年ランキング)、ロームは車載向けディスクリート分野で、世界第3位(同)に位置づけられるメーカーだ。
この2社が車載分野の製品で協業するメリットな何なのだろうか。フリースケールは、これまでも世界の自動車メーカーや自動車用メガサプライヤーに数多くの製品を提供してきた。また、ロームはMCUを支援・サポートする周辺部品(専用ICやトランジスタ、ダイオード、抵抗器)で高い品質と実績を持つ。
今回の協業で、「フリースケールの高性能なMCUにロームの車載用ICやディスクリートを搭載することで、新たなソリューション提案ができる。また、最高品質のリファレンス(推奨部品・回路)を提供することにより顧客の設計負荷を軽減、信頼性のある製品開発を行なえる」とロームのLSI商品戦略本部長の高野利紀取締役は述べ、同時にフリースケール日本法人のディビッドM・ユーゼ社長は「日本の自動車メーカーや大手部品メーカーはすべて自前で生産する体制を要しているが、今後市場拡大が見込める中国やインド、韓国などでは難しい。今回、私たちが手を結ぶことで、顧客の望む製品をひとつのリファレンスとして提供できる。その結果、顧客の製品(自動車やその部品など)開発時間が短縮できる。当然それはコストダウンにもつながる。こうしたリファレンス化の流れは日本や欧米のメーカーにも拡大する。しかも、我々は既に顧客からの信頼性は高い。そんな2社が手を結ぶのだから」として、今後に期待を膨らませた。
今回、両社は協業の一例として自動車のインフォテインメント用CPU「i.MX6」のリファレンスボードを発表。ロームの電源IC・ディスクリートと最小限の部品を搭載した評価用ボードだ。ロームの電源IC・ディスクリートは業界トップに暗電流の低さを誇っていて回路全体の効率化に貢献。また、CPUの周囲に自由に配置でき熱設計が容易だという。
今後、両社は「協業による製品開発にとどまらず、顧客のベネフィットを常に意識して、業界での存在感を高める努力を惜しまない」(高野氏)とし、「今後、合弁事業などへの発展は」の質問に、「我々の信頼関係は、既に兄弟(弟妹)のようなもの。弟妹関係に結婚は必要ない(笑)」とユーゼ社長は結んだ。(編集担当:吉田恒)