電機大手8社(日立製作所<6501>、東芝<6502>、三菱電機<6503>、NEC<6701>、富士通<6702>、パナソニック<6752>、シャープ<6753>、ソニー<6758>)の2013年度4~6月期決算は、前年同期比で日立以外の7社は増収だが、最終損益の増益は日立、東芝、パナソニック、ソニーの4社、減益は三菱電機、富士通、赤字縮小はシャープ、赤字拡大はNECと明暗が分かれた。通期見通しの上方修正はソニーが売上高で行っただけで、前期までの販売不振や収益性の悪化がひどかった電機業界は、為替の円安だけでは明るい見通しはなかなか見出せないようだ。
日立の売上高は前年同期比1.8%減、営業利益は12.7%減、税引前四半期純利益は13.4%増、四半期純利益は11.1%増。通期見通しの売上高は9兆2000億円、営業利益は5000億円、税引前当期純利益は4250億円、当期純利益は3050億円で据え置き。想定為替レートはドル円は95円で据え置き、ユーロ円を120円から125円に変更している。年間配当は未定。
東芝の売上高は前年同期比9.6%増、営業利益は112.2%増、税引前四半期純利益は174億円(前年同期は146億円の赤字)、四半期純利益は53億円(前年同期は121億円の赤字)。通期見通しの売上高は6兆1000億円、営業利益は2600億円、税引前当期純利益は2000億円、当期純利益は1000億円で据え置き。想定為替レートはドル円を90円、ユーロ円115円で据え置き。年間配当は未定。
三菱電機の売上高は前年同期比6.7%増、営業利益は26.6%減、税引前四半期純利益は11.3%減、四半期純利益は16.4%減。通期見通しの売上高は3兆8100億円、営業利益は2050億円、税引前当期純利益は1850億円、当期純利益は1100億円で据え置き。想定為替レートはドル円を95円、ユーロ円120円で据え置き。年間配当は未定。
NECの売上高は前年同期比1.4%増、営業利益は218億円の赤字(前年同期も78億円の赤字)、経常利益は281億円の赤字(前年同期も121億円の赤字)、四半期純利益は214億円の赤字(前年同期も178億円の赤字)。通期見通しの売上高は3兆円、営業利益は1000億円、経常利益は700億円、当期純利益は200億円で据え置き。想定為替レートはドル円90円、ユーロ円115円で据え置き。年間配当4円は変えていない。
富士通の売上高は前年同期比4.4%増、営業利益は228億円の赤字(前年同期も267億円の赤字)、経常利益は187億円の赤字(268億円の赤字)、四半期純利益は219億円の赤字(前年同期も254億円の赤字)。通期見通しの売上高は4兆5500億円、営業利益は1400億円、経常利益は1350億円、当期純利益は450億円で据え置き。想定為替レートはドル円93円、ユーロ円120円で据え置き。年間配当は未定。
パナソニックの売上高は前年同期比0.6%増、営業利益は66.3%増、税引前利益は224.2%増、四半期純利益は741.8%増。通期見通しの売上高は7兆2000億円、営業利益は2500億円、税引前利益は1400億円、当期純利益は500億円で据え置き。想定為替レートはドル円85円、ユーロ円110円で据え置き。年間配当は未定。
シャープの売上高は前年同期比32.6%増、営業利益は30億円(前年同期は941億円の赤字)、経常利益は127億円の赤字(前年同期は1038億円の赤字)、四半期純利益は179億円の赤字(前年同期は1384億円の赤字)。通期見通しの売上高は2兆7000億円、営業利益は800億円、経常利益は400億円、当期純利益は50億円で据え置き。想定為替レートはドル円95円、ユーロ円125円で据え置き。年間配当は無配のまま据え置き。
ソニーの売上高は前年同期比13.0%増、営業利益は479.4%増、税引前四半期純利益は391.4%増、四半期純利益は34億円(前年同期は246億円の赤字)。通期見通しの売上高は4000億円上方修正して7兆9000億円、営業利益は2300億円、税引前当期純利益は2100億円、当期純利益は500億円とした。想定為替レートはドル円を90円から100円、ユーロ円を120円から130円に変更している。年間配当は未定。
前期の中間決算ではパナソニック、シャープ、ソニーの最終赤字が世間を驚かせ、株式市場にショックが走った。結局、ソニーは資産の売却を進めて本決算で強気の見通し通りの最終黒字にしたが、パナソニック、シャープは最終赤字を計上した。その3社の2014年3月期の通期見通しは営業黒字、最終黒字で揃っている。「自動車と住宅」にシフトすると宣言し、この2部門が伸びたパナソニックはコスト削減効果も出て大幅増益で通期見通しに対する営業利益の進捗率が25%を超え、順調な滑り出し。四半期純利益が通期見通しの約2倍になったのは年金制度の変更で798億円の営業外収益を得たことによる特殊要因である。ソニーはテレビ事業が黒字転換しても営業利益の進捗率は15.8%、最終利益の進捗率は6.96%でやや不安がある。シャープに至ってはソーラーやIGZO液晶が好調でやっと黒字転換したばかりで営業利益の進捗率3.7%、四半期純利益は赤字で、この先、サプライズ的な業績急回復が起きたり、前期のソニーのそれをしのぐような資産売却でも実行しなければ、通期見通しの最終赤字への下方修正は必至だろう。秋の第三者割当増資、公募増資、転換社債の償還が無事に終わることを祈りたい。
だが、他の5社の決算内容も決してほめられたものではない。第1四半期の営業利益の通期見通しに対する進捗率を見ると、日立は11.0%、半導体フラッシュメモリーが貢献し大幅増益で内容のいい東芝でも9.3%、三菱電機は主力の産業機器が悪く16.6%、NEC、富士通は営業損益が赤字で、どこも25%に達していない。
社会インフラ部門が大きい日立、東芝、三菱電機はアベノミクスの財政出動の恩恵も受けられるのでまだいいが、問題なのは第1四半期の損益が完全に赤字のNECと富士通。もし中間決算で黒字化できないと、昨年のパナソニックとシャープのような衝撃的な通期最終赤字見通しが飛び出すかもしれない。NECはスマートフォンから撤退したが、携帯事業に限って言えばソニーは好調だがシャープは下方修正、パナソニック、富士通、NECは営業赤字で、スマホは部品やゲームは良くても本体メーカーは競争が厳しく、なかなか利益を出せない分野。撤退が吉と出ることも考えられる。(編集担当:寺尾淳)