「食」生活をフォローする企業の福利厚生とは

2012年12月29日 19:10

健康志向が高まる現代社会において、「食」への関心は老若男女問わず高まり続けている。なかでも多くのビジネスマン&ウーマンが利用する社員食堂は、家ご飯と同じくらい重要な役割を占めており、福利厚生の一環として「メタボロックシンドローム対策」を挙げている企業もあるという。

 その代表的なものが一大ムーブメントを起こしたタニタの社員食堂だろう。体重計など計測器の大手メーカーであるタニタは、経営理念である「我々は『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献します」をテーマに“メタボ社員ゼロ”を掲げ、それを実践する場として1999年、社員の健康の維持・増進を目的に東京都板橋区の本社に社員食堂をオープン。「おいしく、お腹いっぱい食べていたら、知らないうちにやせていた」をコンセプトに運営するスタイルに注目が集まり、書籍である「体脂肪計タニタの社員食堂」はシリーズ累計420万部発行という大ヒットとなった。

 また、2012年1月には前述の書籍に掲載されたレシピをベースにしたメニューが食せる「丸の内タニタ食堂」を飲食チェーンのきちりと業務提携して、東京・丸の内にオープン。テレビや雑誌などに取り上げられ、遠方からも食べに来る人で行列ができるほどに。6月にはNTT東日本関東病院のレストラン棟に、2号店「NTT東日本関東病院タニタ食堂」もオープンしている。

 ロート製薬<4527>は「製薬会社の社員として、まず自らが健康でなければならない」との思いから、社員みんなが元気になれる方法として、2004年に「スマートキャンププロジェクト」を掲げている。これは自分でストレスを発散できる3つの方法として「疲労をため込まない」「悩みをためない」「食べ方を改善」を提案するというプロジェクト。その第一弾として誕生したのが大阪本社に建てられた黄色の建物で、1階にロートオリジナルの家庭薬膳レストラン、2階に整体とヘッドスパの2つのリラクゼーションスペースを設置。社員が自由にストレスリリースできる癒しの場を設けている。このプロジェクトは東京でも行われ、オリジナルの旬穀旬菜カフェと疲れを解消するリラクゼーションスペースを設けたが、大阪と異なり「福利厚生のおすそわけ」として、社員以外の一般の人も利用できるようにしている。大阪と同様、一汁三菜という旬の食材を使ったメニューはほぼ日替わり。2012年9月には社員食堂でのメニューなどが掲載された「ロート製薬のスマートごはん」も発行し話題となっている。

 各企業、様々な福利厚生があるが、「食」の大切さを重要視したこのようなものは自らの健康に直結するため、心に響くものがあると考えられる。厚生労働省によると、社員離職率は高卒で約35%、大卒で約30%となっており、定着率を高めるためには仕事内容と同様、福利厚生のあり方も重要ではないだろうか。いかに個々のモチベーションを持続していけるのか、「食」を絡めた各企業の福利厚生の今後に注目していきたい。(編集担当:宮園奈美)