ヤマハ発動機ジュビロ、残り1試合、日本国籍取得のトーマス選手に注目

2012年12月29日 20:03

 ジャパンラグビートップリーグは1月6日の1試合で終了、その後、上位チームによるトーナメント戦を経て、今シーズンの優勝が決まる。現状では当初の予測通り、サントリーサンゴリアスが首位。神戸製鋼コベルコスティーラーズ、東芝ブレイブルーパス、パナソニックワイルドナイツと続いている。開幕前、注目されていたのがヤマハ発動機ジュビロ。名将、清宮監督が2年目を迎え、どういった戦いを展開するのか、話題となっていたが、現在は最後の1試合の結果次第で5位から7位までの順位が確定する状況。開幕当初は4連勝を果たすなど、スタートダッシュに期待感も高まったが、あと一歩及ばない惜しい試合も多かった。8位であった昨年に比べ格段にチーム力はあがったものの、ヤマハファンとしては物足りないシーズンといえそうだ。

 そのような中、ヤマハで今シーズン、格別な思いでグランドに立った選手がいる。それが2012年6月に日本国籍を取得、新しい名前は本名に漢字一文字を加えたトーマス・優・デーリック・デニイ選手である。帰化した理由について「ヤマハの一員としてもっと試合に出て、みんなにプレーを見て欲しかったから」と口にしていた。7人制ラグビー日本代表の現・スキルコーチ、パウロ・ナワル氏とその奥様との縁で2003年、フィジーから白鴎大の国際経営学部に留学。「将来、結婚して子どもを育てるなら環境は日本の方がいい」と思い、卒業するころには永住を考えはじめていたというトーマス選手は、故郷には帰らずトップリーグの数チームでトライアウトを受けたという。「白鴎大はラグビーの強豪ではなかったけど、真っ先に答えをくれたのがヤマハだった。だから僕もすぐに決めました」。

 しかしヤマハ加入後は海外から名うてのプレーヤーが次々と加入、外国人枠の影響で出場機会も激変。「試合に出ても出場時間が短くどんなプレーを見せればいいのか迷っていた。このままではチームから捨てられるんじゃないかと不安もありました」。そんなトーマス選手に大きな影響を与えたのが加入2年目のシーズンにヤマハにやってきたニュージーランド代表の元主将で、当時の彼と同じポジションのルーベン・ソーン選手だった。「フィットネス、スキル、精神面などすべての面で素晴らしい選手でした。彼も人間ですから疲れていたこともあったはずなのに、練習や試合でレベルを落とさない。多くを語らない無口な選手でしたが、その姿を見てチームがついていこうとする。自分もそんな選手になりたいと思った。そしてたとえ今は試合に出られなくても、全力で練習に取り組もうと思いました」。

 トーマス選手は華々しい経歴を携えてやってきた外国人選手ではない。トライアウトを受け、大学ラグビーのスター選手らの同期として加入してきた新卒選手の一人だという。出場機会に恵まれなくとも常に真摯に練習に取り組んできたヤマハ生え抜き選手の苦労人。昨年からはフランカーからロックにコンバートされ、出場機会も増加、日本人となった今シーズンはチームの精神的支柱として存在感を示し、トップリーグにやってくる著名な外国人選手と同等以上のプレーを見せている。今シーズン、3試合目ではマンオブザマッチも受賞。今後もトーマス選手の活躍に期待したい。