2013年、Amazonが更なる進化を遂げる?

2013年01月14日 11:54

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Amazonは2011年以降、各種映像コンテンツの権利を持つ企業との提携を積極的に進めており、Apple以上の本気度を窺わせている。

  eコマースの最大手として、日本国内でもすっかりお馴染みとなったAmazon 。もともとは、インターネット書店として開業したこの企業は、インターネット上の商取引の分野で初めて成功した企業ともいわれているが、その現状に満足することなく、時代のニーズとともに変容し続け、今や「Amazonなら何でも揃う」といわれるほどの巨大通販サイトにまで成長した。ところが、この「Amazon=通販サイト」という一般的なイメージが、この1~2年でまた劇的に変わるかもしれないのだ。

  AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスは、タイプこそ違えど、故・スティーブ・ジョブズと度々比較されるほどの優秀な経営者。卓越したビジネスセンスやリーダーシップで『Fortune』誌の「2012 Businessperson of the Year」にも選ばれている人物。そんなベゾスが次に狙っているのは、なんと放送産業だという。

  日本では「今さら、放送産業?」と首を傾げる人も多いかもしれないが、テレビの持つマスメディアとしての影響力は未だに絶大で、とくに欧米においては、ケーブルテレビによる有料放送が日本よりも浸透していることもあり、若者のTV離れも日本ほど顕著ではない。

  放送産業が市場としてはまだまだ大きな可能性を残していることに、いち早く目をつけていたのはAmazonではなくAppleだ。Appleはジョブズ存命の頃から「Apple TV」の開発を進めており、それが話題となっていることからも、次代の放送産業でもAppleがリーディングカンパニーになるとの見方も多い。ところが、ここにきてAmazonがアグレッシブな動きをみせているのだ。

  次代の放送産業で成功をおさめる鍵は、優れたハードウエアではなく、いかに多くのコンテンツを揃えるかに掛かっている。例えば、iPodが爆発的に売れ、音楽産業に革命を起こしたと言われる最大の理由は、iPodが優れたハードであるだけでなく、膨大な音楽コンテンツを提供するiTunesがバックボーンに存在しているからである。また、ゲーム業界のハード戦争においても、いくら性能が高くてもソフトの少ないハードが売れずに苦戦を強いられてしまう事実からも見てとれる。

  放送産業でもそれは同じで、次世代の放送産業で勝ち残るためには、これまでテレビ局が独占してきた映像コンテンツの再配信権、とくに人気のドラマやスポーツなどの配信権をライバル他社よりもより多く獲得すること、そしてさらに自社制作の映像コンテンツを揃えていくことが重要になる。その点、Amazonは11年以降、各種映像コンテンツの権利を持つ企業との提携を加速度的に進めており、Apple以上の本気度を窺わせている。

  まず、既存の映像コンテンツの面では、Amazonの会員制有料プログラム『Amazon Prime』に入会すれば、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントやワーナーブラザーズ、パラマウント・ピクチャーズなどの映像コンテンツのほか、CBS、Fox、NBCユニバーサル、Viacomなどのテレビ映像のコンテンツも視聴できるようになっている。

  さらにAmazonは「Amazon Studio」という企画・制作プロジェクトを立ち上げて、オリジナル映像コンテンツを募集している。しかも、これの注目すべきは単にオリジナルで映像コンテンツを制作するという点ではない。Amazon Studioでは毎月、企画のコンテストを開催し、世界中の参加者がそこにエントリーされた企画をブレスト・デベロップするというシステムが運営されている。早い話が人材発掘プロジェクトである。つまり、Amazonでは「自社でコメディショーを制作する」と発表していることからも、どうやら、スタッフさえも自社で賄おうとしているようだ。

  Amazon とAppleが放送産業に革命を起こすのか。2013年は、放送業界のみならず、これからのエンターテインメント業界全体にとっての節目の年になりそうだ。(編集担当:藤原伊織)