2012年10月11日、アメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社ブルームバーグのインタビューにおいて、インターネット通販国内最大手の楽天<4755>の会長兼社長、三木谷浩史氏はインドやオーストラリアへのeコマース事業の展開を検討していることを明かした。
楽天は、日本国内でのシェアは一位であるものの、現在、楽天のネット通販の世界シェアは第三位。二位のアップルとは僅差ながら、一位のアマゾンとの差は3倍以上の開きがあるといわれている。今後、同社が海外での販売網を拡大することで、競合するアップルやアマゾンとの競争が激化すると思われる。
楽天が2012年現在で展開している国は13カ国。流通総額の海外比率は7%。これを10年以内を目処に約2倍となる27カ国に増やし、流通総額70%まで飛躍的に拡大させる計画だ。
楽天は、これまで積極的なM&Aを通して海外事業を拡大してきた。10年にはバイ・ドット・コム社を約230億円で、またプライスミニスター社を約224億円で買収。EC事業以外でも05年にはオンライン・マーケティングのリンクシェア社を買収して、世界展開を視野に入れた動きを早くから見せている。こうした動きを通して、日本企業でありながら世界でも着実に認知を広めてきた。市場も成熟してきており、世界進出に加速をつけるには良い時期ではある。ただし「デジタルコンテンツ事業の展開次第でペースは変動する」と、三木谷氏は付け加えている。
面白いのは、楽天だけでなく、アマゾン、アップルも、eコマースのトップ3がこぞって自社でのデジタル端末を有し、それを今後の戦略の軸に置いている点だ。アップルのipad、アマゾンのKindle Fire、楽天は電子書籍Kobo。ipadの人気は、少なくとも日本国内では、頭一つ分抜けている感があるが、Kindle Fireも高性能な端末を原価割れギリギリの価格で提供することでシェアを急速に広げている。そんな中、楽天のKoboは、電子書籍として特化することで端末価格を抑え、電子書籍のニーズを一手におさめたい構えを見せる。Koboは12年の10月現在、約260万冊に上る電子書籍コンテンツを、ウェブサイトを通じて提供しており、評判も上々のようだ。
13年も引き続き注目を集めるであろうタブレットや電子書籍などのデジタル端末のシェアは、今後のデジタルコンテンツ販売事業に直接、大きな影響を与えることは間違いない。それゆえに、各社ともに躍起になって端末の普及に努めているのが現状といえるだろう。また、その状況次第では、業界三位の楽天が大きく躍進する可能性もある。
しかし、この楽天の海外進出や端末のシェア争いに対して、専門家の中には厳しい意見を持つ者も少なくない。リスクヘッジを慎重に行なっておかないと、大きな痛手を被る可能性もあるというのだ。
圧倒的なシェアを誇るアマゾンとの明確な差別化ができていない状態で、同じ土俵で勝負を挑んでも、単なるイス取りゲームになってしまうのではないかと懸念する声もあがっている。確かに、そうなると最終的には資本力の差になる。腕力でねじ伏せられてしまうようなことにもなりかねない。世界進出を積極的に進めたい楽天が、今年どんな動きを見せるのか、大いに注目したいところだ。(編集担当:藤原伊織)