15年度の国内飲料市場規模は前年度比0.7%増の4兆9,700億円と微増に転じる

2016年12月07日 08:58

 矢野経済研究所では、国内の飲料市場の調査を実施した。調査期間は2016年 9月~10月、調査対象は飲料メーカー、販売企業等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。

 それによると、2015年度の国内飲料市場規模(牛乳・乳飲料を含む)はメーカー出荷金額ベースで、前年度比100.7%の4兆9,700億円と微増に転じた。ゴールデンウィークが好天に恵まれたことや、最盛期の夏場前半に好調な推移をみせたことが要因として挙げられる。一方で、8月後半から9月にかけての天候不順や、暖冬の影響でコーヒー飲料などホットな商品の売れ行きは苦戦したが、常温商品や冷温商品が従来の秋冬よりも堅調に推移したこともあり、前年度比で微増となった。

 2016年度の国内飲料市場規模(牛乳・乳飲料を含む)はメーカー出荷金額ベースで、前年度比101.4%の5兆400億円と、2013年度以来5兆円規模に回復するものと予測する。上期は比較的好天に恵まれ、特に、西日本が猛暑となったことが販売を押し上げた。9月には残暑がなく、好調とは言い難いものの、冬場の主役となるコーヒー飲料についてはメーカー各社から新しい提案も行われていることから、市場全体としては回復傾向にあるものとみており、プラス成長を予測する。

 一方で、飲料メーカーを取り巻く環境は厳しさを増してきているという。2016年度にはコカ・コーラシステムの2大ボトラーであるコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストの経営統合が発表され、2017年4月にコカ・コーラボトラーズジャパンが発足する。現下、グループ内の事業再編、大手企業による自動販売機事業の分社化やオペレーターの統合など、生き残りをかけた業務提携や事業再編などの動きが活発化している。

 また、2015年度は一部商品で生産が追い付かず、一時販売休止となるなどヒット商品が生まれたが、全体的には目立ったヒット商品は出ておらず、例年以上に飲料メーカー各社は実績のある既存ブランドの維持に注力したとみる。こうしたなかで、大規模リニューアルによるロングセラーブランドの復活も見られた。

 販売数量の拡大による収益確保が難しい状況では、実績のある既存ブランドに経営資源を集中することが成長戦略の一つになっている。また、大型容器の低価格販売に関しても、各社が今まで以上に適正価格の維持・強化の方針を打ち出していることで、店頭での販売価格は下げ止まり、上昇傾向も見られるようになってきている。原料価格の高騰などで多くの食品が値上げされている昨今であるが、清涼飲料については値上げがされにくく、反対に店頭価格が下落する状況が長く続いていた。低価格販売から脱却し、収益性の確保を目指した今回の取り組みが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)