パナソニックは2017年に、米テスラモーターズ向けに太陽電池を供給する方向で協議を開始した。テスラは11月21日に米ソーラーシティの買収完了を発表。クリーンエネルギー志向の消費者にワンストップで電気自動車(EV)や家庭用蓄電池といった製品と、その周辺サービスを提供する同社の構想に弾みをつけた。これによりソーラーシティの買収が前提となっていたパナソニックとの協議も一歩前進したかたちだ。
太陽電池事業に関しては、供給価格の下落から日本国内外含め製造、販売事業で利益の確保が難しい状況だ。矢野経済研究所が15年に実施した調査によれば、世界の太陽光発電システムの設置数は25年まで年平均成長率10.5%で推移するものの、太陽電池の供給価格について25年までの年平均成長率は-4.2%で下落。15年時点ですでに2.2ドル/Wにまで落ち込んでいる。パナソニックの太陽電池事業についても市場の低迷で国内工場の稼働率を落としている。テスラとの協議が成立すれば休止中の二色の浜工場を稼働し、太陽電池工場の稼働率を上げることができる。工業用の太陽電池以外でもテスラの家庭用蓄電池向けにリチウムイオン電池セルの販売増が見込まれ、日本でのテスラの蓄電池販売も今回の協議に含まれる。
パナソニックはすでにEV向け電池においてテスラと協業しており、同社の命運を賭けた事業となっている。同社は約4000億円の社債を発行し、その多くをテスラの大型電池工場や中国・大連の電池工場への投資に充てる方針だ。16年度第2四半期連結決算では家電事業以外の部門は軒並み減収減益で営業利益、純利益についても下方修正を発表。主力の家電事業についても海外勢との競争で今後も厳しい状況が続くと見込まれる。そんななか、EVは今後大きく需要が伸びる可能性があり、競合の少ない分野だ。テスラは17年後半出荷予定の「モデル3」について、すでに数十万台規模の大量事前予約を抱えており、20年としていた年間50万台のEV生産計画を18年に前倒し、20年末までに年間100万台を目指すとしている。
パナソニックは18年度で創業100周年を迎えることになるが、その時点での売上高目標を10兆円から8兆8000億円に下方修正。16年度の売上高見通しについても7兆6000億円から7兆2000億円に下方修正している。売上高目標を犠牲にしてでも先行分野へ投資を優先する同社の姿勢から、時代の変化に適合した事業内容転換による生き残り戦略がうかがえる。(編集担当:久保田雄城)