矢野経済研究所では、脳卒中リハビリテーションに関する病院アンケート調査を実施した。調査期間は2016年5月~6月、調査対象は国内のリハビリテーション科を診療科に持つ病院(集計対象85件)。調査方法は郵送(留置)アンケート方式。
この調査では、国内のリハビリテーション科を診療科に持つ病院に対して、脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳内出血などの脳血管障害)リハビリテーションの状況について、アンケート調査を実施した。リハビリテーション患者数に占める脳卒中リハビリ患者の比率について、病院85施設へ尋ねたところ、「75%以上」という回答が8.3%、「50~75%未満」が20.0%と、脳卒中リハビリ患者の比率が過半数を越える施設が約3割という結果になった。
国内のリハビリテーション科を診療科に持つ病院(集計対象79件)に、脳卒中リハビリ患者の年齢構成について尋ねたところ、「85歳以上」の患者が75%以上を占める施設が7施設、50~75%未満が施設であった。また、「75~84 歳以下」の患者が 75%以上を占める施設が4施設、50~75%未満が 14施設と約2割の施設で75歳から84歳以下の高齢者が過半数を越えた。一方で、「49歳以下」の患者は全ての施設で25%未満となっており、高齢者がかなり多いという結果になった。
国内のリハビリテーション科を診療科に持つ病院(集計対象82件)に、脳卒中患者のリハビリにおいての課題・問題点について、当てはまるものを3つまで選択(複数回答)してもらった。「今後のリハビリ関連点数の減少」が40.2%と最も高く、「退院後の患者の情報の把握」が35.4%、「人手の不足」が30.5%、「現在のリハビリ関連の点数が低い」が29.3%、「退院時の訪問看護・介護サービスとの連携」が 26.8%と続いている。
現在のリハビリテーションの実施内容は、看護師や理学療法士、作業療法士らによる人的サービスであり、人手の確保とともに、さらに効率的な運営が求められていくとみられる。また、脳卒中リハビリ患者は高齢化しており、リハビリ終了後も恐らくは自宅もしくは介護施設と医療機関を往復することが多くなり、脳卒中治療やリハビリを実施した医療機関に戻ってくることは多くなる。そのため、退院時の訪問看護・介護サービスとの連携や退院後の患者の情報の把握など、多職種連携の中で情報共有しておくことが望ましいと考えられるとしている。
団塊の世代が75歳以上となる2025年問題に関わり、脳卒中患者数は増えていくと考えられる。同時にリハビリ患者に占める脳卒中リハビリ患者の比率も徐々に高まっていく。現在の脳卒中リハビリの実施内容はいわば人的サービスであり、さらに効率的な運営が求められていくであろう。エアロバイクや運動マシンが導入されているところもみられるが、現在の診療報酬自体には、機器・用品の使用については設けられていない。リハビリロボットなど先進的な機器の使用は、リハビリ効果もさることながら、施設スタッフのモチベーションアップや医療機関の差別化といった効果についてもありえる。診療報酬の動向によっては、リハビリの機械化は検討されていくと予測するという。(編集担当:慶尾六郎)