昨年の東京モーターショーの会場内で行われた「SMART MOBILITY CITY 2011」。スマートコミュニティの分野でクルマがどのように変化し、貢献していくかという可能性を様々な形で提案したイベントであったが、タクシー業界でもスマートコミュニティ分野において積極的な動きが見られている。
省エネの観点で言えばエコカーを代表するトヨタの「プリウス」はタクシーとしてかなりの台数が街を走っており、見掛けたことがある人も多いだろう。その「プリウス」は1月30日からプラグインハイブリッドタイプが個人向けに発売されたが、業務用として同車は既に京都市内をはじめ、数台がタクシーとして走っている。
一方、究極のエコカー、EVは一般ユーザー向けと同じく、タクシーとしても車両価格や充電インフラなど、まだまだ普及期になっていない現状もある。経済産業省の調べによると、EVタクシーの普及台数は昨年の3月末の時点では、大阪の50台を筆頭に神奈川の45台、東京の15台が上位3都道府県となっており、日本全国で合わせても150台ほどだ。ただ、タクシー事業者から見ても、燃料がローコスト、企業イメージアップなどメリットも多くあることから、運用の工夫が必要であると考えられている。
そんな中、日産自動車、兼松など5社が、大阪府、京都府、京都市の3自治体とタクシー事業者29社の協力を得て、環境省の「平成23年度地球温暖化対策技術開発等事業・EVタクシーの実用化促進と運用方法確立のための実証研究」の実証実験を1月30日よりスタートさせた。この事業は、EVタクシー呼び出し・配車機能、適正な航続距離の計算、充電器の認証・予約機能等を通じてEVタクシーの需要に応じた配置や充電を管理するシステムを開発・活用することにより、EVタクシーのビジネスモデルの構築と普及促進による温室効果ガス排出量削減に貢献することを目的としている。
ここで使われるシステムは「EVタクシー運行最適化システム(EVOTシステム)」。ユーザーはスマートフォンやタブレット端末用の「EVOTCall」というアプリケーションを使用し、タクシー側は「車載端末用アプリケーション」を使用して相互連携を行う。またタクシー側のアプリケーションは、バッテリー残量に応じた充電タイミングをドライバーに告知することもできる。この導入により、効率的な走行や充電を実現し、CO2排出量の削減に貢献することが可能としている。また、ユーザーはスマートフォンで周辺のEVタクシーの位置を確認できることにより、待ち時間のストレスなく呼び出すことが可能となり、加えて乗車による環境貢献度をスマートフォンで見ることにより、エコを意識しながら利用することができる。
この実験は2月末まで行われ、実証期間中は大阪・京都で45台の”リーフ タクシー”がデータ取集を行う。
実際稼働し、ユーザーが便利と感じるには普及台数が多くなければならないが、「スマートコミュニティ」社会に向けて、確実にクルマ社会が歩み寄っているという風は今回の実証実験で感じることができる。