残業上限規制を60時間と定めた「働き改革実行計画」が2019年4月に施行されるのに合わせ、厚生労働省は企業に対し月45時間を超える残業をさせる場合に従業員の健康を確保するための対策を講じることを義務付ける方向で検討に入った。
残業上限規制を60時間と定めた「働き改革実行計画」が2019年4月に施行されるのに合わせ、厚生労働省は企業に対し月45時間を超える残業をさせる場合に従業員の健康を確保するための対策を講じることを義務付ける方向で検討に入った。すでに成立している「働き方改革関連法」では特例で月100時間未満の残業が容認されているため、健康対策を義務付けることで企業にも注意を促す目的がある。
厚生労働省が専門家を交えて開催した検討会では、時間外労働が月45時間以内であれば健康被害が発生する危険性は低いという結論に達した。その一方でそれ以上の労働、特に時間外労働が月100時間を超える、もしくは直近の2ヶ月から6ヶ月の平均が80時間を超えると健康障害発生のリスクが一気に高まる。最も懸念されるのは心臓病や脳卒中だ。というのは、時間外労働が増えれば増えるほど睡眠や休息に充てられる時間が短くなり疲労回復が遅れるからだ。加えて仕事のストレスが増えることによって免疫機能に悪影響が出たり、飲酒・喫煙の量が増えることで呼吸器や消化器の病気になりやすくなったりするという報告もある。
過度な時間外労働は身体だけでなく精神にも悪影響を与える。イギリスで行われた調査によれば、毎日4時間以上残業する人は残業をしない人に比べてうつ病になるリスクが2倍に増えることが分かった。国内でも過度の時間外労働、働きすぎによる自殺や引きこもりが社会問題になりつつある中、健康問題が大きくなる前に企業が何らかの対策を講じることは必須となるだろう。
ただし厚生労働省の求める対策は具体的なものではなく、その裁量は企業に委ねられている。さらに具体的な対策を労使と結び、労働基準監督署に提出する協定に記載させることになってはいるが、2013年に行われた調査ではかなりの数の中小企業は時間外労働についての労使協定を結んでいないことが明らかになった。今後は国が企業に対して健康被害を防ぐ対策を講じることを義務化するとともに、何らかの罰則規定を設けることで過労死や過度な時間外労働を防ぐことが必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)