シェアハウスの運営会社の破綻によって一躍注目を浴びることになったスルガ銀行の不正融資問題は、第三者委員会の調査や金融庁の検査が明らかにされるに従い、パワハラや審査資料改ざん、創業家関係者への不透明な融資など、耳を疑うようなずさんな経営体制が次々と明らかになっている。
シェアハウス関連への融資など個人向け不動産融資は、スルガ銀行のみでなく低金利政策の中、人口減少で顧客が減少する地方において多くの地方銀行がシェアを拡大してきた領域で、これについては金融庁が昨年より行き過ぎた融資としてこれを監視する方針を公表している。
6日には信用調査会社の大手である東京商工リサーチが「スルガ銀行の取引企業」調査の結果を公表している。レポートによれば、スルガ銀行の個人向け貸出は2兆9,259億円で、貸出金残高3兆2459億円の90.1%を占め突出している。シェアハウス勧誘に関しても年収1000万前後のサラリーマンを対象顧客としていたという情報もあり、この財務上の数値はこれを裏付けるものだ。
東京商工リサーチが保有する約480万社の企業データベースを用いた取引先分析ではスルガ銀行をメインバンクとする企業は3999社存在する。スルガ銀行の貸出金残高と同水準の第四銀行の1万2287社と比較しても3分の1程度で、取引企業が圧倒的に少なくなっている。スルガ銀行をメインバンクとする企業の数は、貸出金残高がスルガ銀行の約3分の1の清水銀行をメインバンクとする企業は3002社と同程度で、スルガ銀行がいかに個人向け貸出へ偏重していたかがわかる。
スルガ銀行をメインバンクとする3999社のうち不動産業の構成比は5.7%であり、静岡県内に本店を置く4銀行の中でも突出して高くなっている一方、製造業は9.7%と10%を下回っており、静岡県内4銀行のうち1桁台はスルガ銀行のみである。スルガ銀行の経営は、個人向けの投資用不動産融資で帳簿上高い収益を計上してきたという、金融庁が昨年より監視対象にしてきた典型的なずさんな経営体質だ。
問題発覚後、スルガ銀行の個人向け新規貸出は大きく減少しており大幅な減収が予想される。この問題が「取引先企業の資金繰りに直ちに影響する可能性は低い」と東京商工リサーチはみているが、「中長期的にはスルガ銀行の行方と同時に、貸出金利や債務者区分の動向にも目を離せなくなってきた」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)