2011年の東日本大震災以後、日本では電気消費を中心とする省エネ対応の機運が大きく高まった。これに対応して省エネ関連投資は大きく成長を維持してきたが、既にこの需給の高まりは一巡したと見られる。
総合マーケティング業の富士経済が、既存のEMS(エネルギーマネジメントシステム)販売ビジネスから、この技術を活用した新規サービス提供への転換により拡大が期待されるEMS関連の国内市場を調査し、その結果を「2018エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」として取りまとめ、公表した。
この調査では、EMS関連設備などのハード面のみでなくEMS活用で創出され拡大が期待される関連サービスの市場をも含め幅広く調査・分析している。新規関連ビジネスとしてはネガワット取引やVPP(仮想発電所)やDR(需要側制御)が含まれる。
レポートによれば2017年度のEMS・設備・関連サービスの総市場規模は8000億円程度と推計されているが、2030年度にはEMSのみで17年度比24.1%増の855億円で、関連設備、関連サービスは同2.4倍の8412億円、7207億円となり、約1.6兆円規模の市場に急成長すると予測されている。特に注目されるエネルギー設備リースサービス(分散型電源等)市場は17年度比2.2倍の2000億円規模に達するとされている。
国内のEMS関連市場は震災以降の電力コスト削減機運が一巡し足踏み状態にあり、導入メリットも希薄化し既築住宅や中小規模事業者の需要が進まず伸び悩んでいる状態だ。一方でVPPやDRの実運用による需要家側での電力需給調整ビジネスの本格化やデータ活用シーンの拡大による新規ビジネスの展開などEMSビジネスのサービス化が期待され市場は新たなフェーズに入ったと言える。
住宅分野ではZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及推進が進み、また非住宅分野では大規模再開発案件などが拡大を後押ししているものの新築物件数が大幅に増える余地は乏しくリプレース中心で小幅な伸びにとどまっている。しかし、今後メーカーの努力により変化の兆しも示唆されている。
関連サービスには住宅向けサービスや事業者向け、運用事業者向けサービスなどがあり、電力需給予測などをサポートするサービスや設備投資を支援するリースサービスなどの活用も進んでおり、エネルギー政策も大きく様相を変化させていきそうだ。(編集担当:久保田雄城)