2019年10月に行われる予定の消費増税は国民の大きな関心事であるが、ことさら大きな関心を寄せているのが医療業界だ。3月には診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で、医薬品・特定保健医療材料の取引価格に関する調査を行うことが決まった。
医療業界が消費増税に敏感に反応するのには訳がある。実は一般の市民が受ける保健医療に関しては消費税は非課税なのだ。その一方で医療機関が購入する物品や医療器材などには消費税がかかっている。一般的な商取引では小売業者は卸売業者に支払った消費税分を小売価格に転嫁し、結果的に最終消費者が消費税を支払うことになっている。しかし医療業界では消費増税分を診療報酬に上乗せすることはできず、医療機関側が負担する、いわゆる損税となっているのが現状だ。そのため消費税が導入された1989年から消費税対応改定が行われてきた。
こうした状況を踏まえ、医療業界側からは消費増税に伴って消費税問題の抜本的な解決を求める声も相次いでいる。診療報酬に対してゼロ%の課税を行い医療機関に税還付を行うという提案や、診療報酬によって消費増税分を補填し足りない分を医療機関に還付するという意見もある。この背景には2014年に行われた消費増税の際に、医療機関の補填率が16年度時点で92.5%と増加分を補填しきれなかったことがある。医療業界としては、19年の消費増税でも同様の状況が生じるのはなんとしても避けたい構えだ。
消費税増税は社会保障などの財源を確保するために行われるものだ。しかしその消費増税によって社会保障の一部である診療報酬に増税分が転嫁されるというのは消費者として腑に落ちない部分もあるだろう。その一方で医療機関としてもこれ以上損税の不利益を被るのは避けたい。消費増税が19年10月に行われる前に、医療業界も消費者も納得できる増税分の補填方法を国として提案できるように検討が重ねられることを期待したい。(編集担当:久保田雄城)