業界トップクラスの低VFを実現したロームの小型ショットキーバリアダイオード「RBEシリーズ」は、低消費電力化・小型化・大電流化への要求が止まらない市場のニーズを捉えて、販売が好調に推移。今年9月から月産1000万個へと生産を倍増させている。
昨年に引き続き大手電機メーカーが大幅な減益となるなど、行き先の不透明感がぬぐえない一方、スマートフォンやタブレット端末の市場は勢いが衰えることなく拡大を続けている。その為、半導体メーカーの中には、薄型テレビ向けやPC向けの製品が厳しい状況に置かれながらも、スマートフォン・タブレット端末向けの製品は好調を維持している企業が少なくない。
LSIや半導体素子を幅広く扱うロームは、そういった企業の代表例であろう。2013年3月期第2四半期決算は好調とは言い難かったものの、スマートフォンなどの省スペース化に寄与するような小型商品については販売を伸ばしており、この分野に、より注力をする姿勢を見せている。
例えば、業界トップクラスの低VF(順方向電流を流した時にダイオードに生じる電圧値。数値が低い程、低消費電力となる)を実現した小型ショットキーバリアダイオード「RBEシリーズ」は、ダイオードの素子構造を見直すことで電流効率を大幅に改善し、従来同パッケージ品と比べてVFを約32%低減。さらに、小型のVML2パッケージ(1.0×0.6mm)をラインアップに加え、同電流定格で比較した場合、最大で約80%の実装面積削減にも貢献している。また、低消費電力化・小型化・大電流化への要求が止まらない市場のニーズを捉えて、販売が好調に推移しており、採用案件の増加に伴い、今年9月より月産500万個から1000万個の体制へと生産を倍増させている。
依然として市場拡大中のスマートフォン。シードプランニングの調査によると、2011年の世界の人口普及率は12%、2016年末には同49%にまで市場が拡大すると予測されている。さらにICT総研の調査では、2011年6326万台あった世界タブレット端末市場が、2015年には2.6億台にまで拡大すると予測され、こちらも市場の拡大が確実視されている。これまで堅調に推移してきた自動車関連市場が調整局面を迎えていると言われているだけに、半導体市場の牽引役として、スマートフォン・タブレット端末などのポータブル機器市場は尚更重要なものとなってくる。そして、この市場を支え、加速する多機能化を実現するための高い技術を、多くの日本企業は持っている。市場拡大の流れに乗ってどこまで業績を伸ばすことが出来るのか、注目が集まるところであろう。加えて、電機メーカーの二の舞とならぬよう、その過程で生まれた技術が、他の追随を許さないよう十分な対策の施された技術であることを期待したい。そうすれば、いつか市場が成熟した際にも淘汰されないような、唯一無二の企業となっているのではないだろうか。