世界の工場とも呼ばれ、人口14億人の大消費マーケットである中国には日系企業が多数進出している。中国・武漢市を発生源とする新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、中国経済は停滞状態で日系企業の多くも工場の稼働停止や事務所、店舗の休止に追い込まれている模様だ。世界の工場・消費マーケットとして製造・販売の集積が進んだことで、中国の経済活動の停滞に日系企業が直撃されている状況だ。
10日、東京商工リサーチが2020年1月までの「チャイナリスク」関連倒産の調査結果を発表した。20年1月の「チャイナリスク」関連倒産は前年同月比200.0%増の6件で2カ月ぶりに前年同月を上回った。
このレポートでチャイナリスクとは、経営破綻の原因が次の8項目のどれかに該当するものだ。1.コスト高(人件費、製造コスト上昇、為替変動など)、2.品質問題(不良品、模倣品、中国製品不信など)、3.労使問題(ストライキ、工場閉鎖など)、4.売掛金回収難、5.中国景気減速(株価低迷、中国消費鈍化、インバウンド低迷など)、6.反日問題(不買、取引縮小、暴動など)、7.価格競争(相場下落、安価製品との競合など)、8.その他。
19年年間では前年比25.0%減の36件と前年を下回ったが、20年1月は大幅に増加し19年1月の2件の3倍に増加した。負債総額については7億2800万円と19年1月の11億9800万円を下回った。件数、負債総額とも18年1月の7件、28億2100万円を下回っているものの、出口が見えない新コロナ関連の影響がどうなるか長期化が懸念される。
これまでは現地の人件費高騰などによる「コスト高」、安価製品との競合による「価格競争」を要因とする倒産が多かったが現況は様相を異にする。具体例では、エコスポット・ソリューションズは廃棄物の輸入制限が強化されたことで取引が縮小したことが破綻要因だ。リサイクルサービスは古紙が輸入制限されたことによる古紙相場の下落が経営を直撃した。新コロナ以外にもチャイナリスクの内容に変化がみられる。
レポートは「規制変更に加え『新型コロナウイルス』感染被害の広がりは日本だけでなく世界の企業に影響が及びかねない。2020年は中国進出や取引傾注のリスクが顕在化するかも知れない」と結んでいる。中国からの直接的な影響のみでなく、中国経済の停滞が世界経済を減速させ日本経済全体へ影響するリスクにも注意が必要だ。(編集担当:久保田雄城)