2020年はxEV(電気自動車)市場が世界的に大きく成長する年とされていた。しかし、新型コロナウイルス感染症パンデミックによる世界経済の減速により来年以降になりそうだ。xEVの伸びで電源の制御・供給を行うパワー半導体の需要も飛躍的に伸びると予想されていたが新型コロナの影響で今年は縮小する見込みだ。
27日に矢野経済研究所がパワー半導体の世界市場の調査を実施し、市場概況や採用動向、個別メーカの事業戦略を明らかにしたレポートを公表しているが、19年におけるパワー半導体の世界市場規模はメーカ出荷金額ベースで前年比0.3%減となる186億1600万ドルとなっている。
18年は186億6500万ドル、前年比5.2%増で堅調に市場は拡大していたが19年下期より産業機器向け自動車向けの需要が低迷したことで19年はマイナス成長となった。20年はさらに新型コロナの影響を受け前年比9.0%減の169億4500万ドルまで縮小する見込みだ。
パワー半導体の需要分野は「情報通信」、「民生」、「産業」、「自動車」の4分野だが最大の落ち込みは自動車向けパワー半導体とみられる。20年の自動車向けパワー半導体市場は前年比18.4%減の35億2600万ドルまで落ち込む見込みだ。一方「情報通信」、「民生」分野ではデータセンターや5G基地局向けの設備投資も活発であることからパワー半導体の需要についても堅調に推移する見通しで減少幅は自動車などより小幅になると思われる。
20年は新型コロナの影響でパワー半導体世界市場は成長が鈍化する見込みだが、21年は一部の需要分野から回復基調に転じ、22年には19年の水準を超える見通しだ。「情報通信」分野はデータセンターや5G基地局への設備投資が活発化するとみられ、21年から増加基調になる見込みだ。5G基地局はMOSFETやダイオードの搭載金額が4G基地局搭載金額の数倍で5Gの普及拡大が市場を押し上げると見込まれる。
「民生」、「産業」分野についても22年には市場は回復し23年からは成長基調で推移する見通しだが、「自動車」は最も回復時期が遅れると見込まれ、23年頃までパワー半導体の需要は小幅な増加にとどまる模様だ。
以上のような分析から、19年から25年までの年平均成長率は4.6%、25年のパワー半導体世界市場規模は243億5100万ドルまでに拡大するとレポートでは予測している。(編集担当:久保田雄城)