スマートフォンやタブレット端末などの普及に加え、産業分野や医療分野にも搭載が進み、拡大の続く無線LAN市場。アイ・ティ・アールの調査では、2011年度の企業向け出荷金額が前年度比約1.5倍となっているなど、今や無線LANを搭載する電気機器が当たり前と言える程、広がりをみせている。
こうした無線機能の取り組みに注力している日本企業の一つがロームである。ロームでは、「誰でも(経験がなくても)」「1個から」使える無線LANモジュールというコンセプトで、開発やサポートを充実させている。例えば、昨年開発されたIEEE802.11b/g/nに対応した無線LANモジュール。無線周波数がすでに調整されており、基本的な無線LAN通信機能だけでなく、認証や暗号化といった機能も全て搭載している。また、TCP/IPプロトコルスタックもモジュール側に内蔵しているため、ネットワーク処理の全てをモジュールに任せることが可能である。これにより、これまで搭載が困難であった白物家電や健康機器等にも容易に無線LANが搭載できる。さらに、コネクタ接続のアンテナ内蔵タイプもラインアップしており、高度なノウハウを必要とする高周波設計が一切不要で、国内電波法認証も取得済みであることから、セットに組み込んですぐに無線設備として利用できるという。平たく言えば、無線LAN機能を搭載したい機器に「組み込めば良いだけ」、という製品なのである。その他、ソフトとハードを全てロームグループ内で開発しているため、充実した開発サポート体制が提供できる点も同製品を特徴づけている。
部品メーカーとしてロームを例に上げたが、こうした開発は多くの企業で実施されている。というのも、以前から、各個人が持つ端末をコントローラ/リモコンとして利用できる電化製品の商品化が模索されていたためである。そんな中、スマートフォンやタブレット端末の爆発的普及が起こり、その道が開けたと言える状況にある。そして、既に機械的な技術は十分に実用レベルにある。後は、どういった機器に組み込み、どういった機能を持たせるのかというアイデアと法律の壁だけである。これら法律の為に、先日もエアコンでスマートフォンによる遠隔操作の対象となる機能が、あまりにも中途半端なものに押さえられたと報じられている。市場の広がりが確実視されるだけに、今後こうした事態が起きぬよう、技術と共に法律も進化することを期待したい。