2024年の展望 モバイル4社

2024年01月16日 07:08

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ドコモはマネックスと提携した「金融サービス」に注目

■ドコモはマネックスと提携した「金融サービス」に注目

 NTTドコモ(NTTの連結子会社)の2024年3月期の通期業績見通しは公表されていないが、4-9月期の営業収益が増収だったので、通期でも増収が予想される。第2四半期、セグメント別では法人事業、スマートライフ事業が大幅増収で、コンシューマ通信の減収をカバーして余りある。しかし損益面は法人事業が減益、コンシューマ通信事業が増益、スマートライフ事業がかろうじて増益だったので、通期で増益か減益かは微妙なところだ。

 2024年のドコモでまず注目されるのは、スマートライフ事業の「金融サービス」だろう。2023年も金融・決済取扱高は順調に伸びていた。2023年は7月に「dスマホローン」、8月にはなさく生命と協業して「dポイント付き生命保険」を提供開始。10月にはマネックス証券と資本業務提携契約を締結し、資産形成サービスにも本格参入した。2024年は新NISAも始まるので、マネックス証券との協業によるサービス強化とデータ活用のマトリクスにより金融サービスでどんな結果を残すか、注目される。

 それ以外では、パートナーの課題をバリューチェーン全体のDX支援によって解決するスマートライフ事業のマーケティングソリューション収入が伸びている。法人事業は統合ソリューションの拡大に向けたネットワークサービスの強化が図られ、コンシューマ通信事業は「ahamo」に続く「eximo」「irumo」のブランド投入で、個人のライフスタイルに応じたサービスミックス提案の強化が図られることになる。 

■auは金融などサービスの充実にシフトする年になるか

 au(兄弟ブランドの「UQ mobile」「povo」と合わせてKDDIの個人顧客向け事業「パーソナルセグメント」)の2024年3月期の通期業績見通しは非公表だが、4~9月期の業績が売上高0.6%減、営業利益0.7%減だったので、通期でも業績が前期比横ばい近辺で着地しそうだ。モバイル通信料収入が減少し、業績はふるわない。

 3ブランドとも鉄道、商業施設など日常生活エリアでの5G対応投資を進めてきたが、2024年はそれが一段落し、サービスの充実などソフト面へシフトする年になりそうだ。その中心はやはり2024年開始の新NISAや金融教育に対応した金融サービスになりそうで、auでは2023年9月に特典満載の「auマネ活プラン」を提供開始し、その布石を打っている。現金だけでなくポイントも「資産(マネー)」とみなし、「マネ活」をバックアップしていく。

 au PAYカードの会員数は2023年10月に900万人を突破し、auじぶん銀行は2023年9月に預金口座数が545万口座を突破した。それらとauカブドットコム証券の3社が一体となって、他社に対抗して金融サービスの充実により注力していく年になるだろう。

■ソフトバンク(モバイル)はグループシナジーを活かせるか

 モバイル通信のソフトバンクは、サブブランドの「ワイモバイル」、電力小売のSBパワーなどととともに、ソフトバンクの個人向け「コンシューマ事業」に属する。その2024年3月期の通期業績見通しは営業利益4700億円で前期の4624億円からわずかに増益の見通しだが、4~9月期は売上高0.4%減、セグメント利益1.9%減。モバイルだけとってもサービス売上高0.8%減で、苦戦していた。

 スマホ契約数は「ソフトバンク」から「ワイモバイル」へのシフトも含めて伸びているが、2021年春に実施した通信料の値下げで平均単価が減少し、それが減収、減益に結びついている。

 ソフトバンクの場合はドコモやauや楽天と異なり、モバイルは金融サービス(ファイナンス)とは切り離されており、通信一本で業績を立て直さなければならない。それでもモバイル契約の主要回線純増数は伸びており、モバイル売上高の減少額は四半期ごとに縮小し、スマホ累計契約数は2023年11月に全ブランド合わせ3000万件を突破した。同年10月の料金プランの改定がプラスの効果をもたらしている。

 目立つのが解約率の低減で、「おうちでんき」「ソフトバンク光」「Yahoo!」「PayPay」などとのグループシナジー効果でスマホ解約率が3分の1に低減したという。2024年の業績挽回のポイントは、グループサービスの利用促進にかかっていると言っていいだろう。

■楽天モバイルは明るい兆しが見えている

 楽天モバイル(楽天グループの「モバイル」セグメント)の2023年12月期の通期業績見通しは非公表だが、1-9月期の業績は単体で売上収益5.0%増と増収。Non-GAAP営業損失は812億円だが前年同期比で364億円縮小している。契約者数、ARPU(1ユーザー当たりの平均売上)とも増加しており、売上収益は21.6%増で、Non-GAAP営業損失は前年同期比で351億円縮小した。先行投資による営業赤字が続き、競合他社と違ってモバイル自体では金融サービスを持っていないが、2024年に向けて明るい兆しも見えている。

 同社によると2023年6月、楽天モバイルに「最強プラン」を開始した後はデータ使用量が増加傾向で、ARPUの上昇で今後よりいっそうの売上収益の増加が望めるという。契約数も着実に伸びており2023年8月に500万回線を超えた。赤字の元凶、設備投資も以前と比べれば大幅に抑制し、年度で2000億円を割り込む見通し。

 2023年10月23日、総務省から「プラチナバンド」こと700MHz帯を割り当てる「特定基地局開設計画」の認定を受けた。サービス開始は2026年3月だが、これで競合他社と並び立つ高品質な通信環境を整備できる可能性が生まれた。プラチナバンド認定も中・長期的には明るい兆しと言える。(編集担当:寺尾淳)