■三菱UFJは「稼ぐ力」がより強まる流れに
三菱UFJフィナンシャル・グループの2024年3月期の通期業績は、その「目標」として連結業務純益1兆4500億円(前期比9.04%減)、経常利益1兆8500億円(81.2%増)、最終利益1兆3000億円(16.4%増)が公表されている。減収増益が見込まれている。
4-9月期中間期時点の大きな利益源は銀行本体の業務とモルガン・スタンレーで、有価証券評価益も高止まり。能登の震災で日銀のマイナス金利政策解除の先行きが不透明になったこともあり、2024年も当面その傾向は続くとみられる。
財務面では、ROEの通期目標7.5%に対して4~9月期は10.65%と高い。中・長期のROE目標9-10%をオーバーしており、順調。顧客部門営業純益の増加が続いて「稼ぐ力」が強まっている。
「アジア✕デジタル」の成長戦略と構造改革のバランスもよく、利益面でも経費面でも当面、中・長期目標の障害になる要素が見当たらない。その間に中期経営計画で強調する「デジタルシフト」に対応するイノベーション「デジタルトランスインフォメーション」を、2024年も引き続き推進していくだろう。
■みずほは資本効率の向上✕成長期待の醸成でPBR改善
みずほフィナンシャルグループの2024年3月期の通期業績見通しは、堅調な本業収益と為替の円安による増益をふまえて上方修正され、連結業務純益+ETF関係損益等17.7%増の9500億円、経常利益15.2%増の9100億円、最終利益15.2%増の6400億円と、増収増益が見込まれている。
経営戦略の最大のテーマは「PBR改善」。資本効率の追求(アセット採算性向上、経費率コントロール)によるROEの向上と、成長戦略の醸成およびディスカウント要因の解消(着実な利益成長の実現、効率的な資本活用、本業収益の安定化、財務健全性の向上など)への取り組みは、順調に推移している。
2024年は、日銀のマイナス金利政策の解消が予想され、それが円金利上昇による財務への好影響をもたらすだろう。新NISAが始まる年でもあり、みずほ証券と楽天証券ホールディングスの戦略的資本提携の効果も現れてくる可能性もある。
■三井住友は日銀の金融政策変更での好影響を予想
三井住友フィナンシャルグループの2024年3月期の通期業績見通しは、4~9月期決算で連結粗利益、連結業務純益、最終利益全てで過去最高益を更新したのを受けて上方修正が行われ、連結業務純益9.6%増の1兆4000億円、経常利益は13.7%増の1兆3200億円、最終利益は14.2%増の9200億円の大幅増収増益が見込まれている。
事業部門別では、リテール部門、ホールセール部門とも業務改善によって経費率が圧縮され、それが業務純益の伸びに寄与している。グローバル部門は欧米アジアなど海外での金融市場環境が厳しいが、それでも経費率は微増。市場部門の経費率はほぼ横ばい。その傾向は2024年も続くとみられる。2026年3月期までの中期経営計画の財務目標は2024年3月期でほぼ達成される見通し。
三井住友FGでは、円金利上昇によるバランスシートの資金利益への影響について、短期金利上昇は300億円増、中長期金利上昇は初年度100億円増と試算している。アメリカが利下げしても日銀のマイナス金利解消が先延ばしになる観測もあるが、2024年の金融をめぐる環境は決して悪くない。引き続き好調な業績が続きそうだ。
■りそなは傘下の銀行、リース会社を再編
りそなホールディングスの2024年3月期の通期業績「目標」は、連結ベースで最終利益6.5%減の1500億円を見込んでいる。連結業績見通しの上方修正は見送っている。
それでも、資本の質的・量的拡充から、その本格活用フェースへ移行して「ROE8%」を目指す資本マネジメントは順調に進んでいる。「健全性」については国際統一基準CET1比率10%程度の目標をすでに達成し、「株主還元」については、総還元性向50%程度の目標に対し、2024年3月期で51.3%となりクリアできる見込みである。
「オーガニック」ではリスク・リターンに優れた貸出資産等の拡充、「インオーガニック」では「お客さま基盤」「経営資源」「機能」の拡充を図るという成長投資に関して、2024年は視界は良好と言えるだろう。
その最大のトピックが、2024年4月に予定されるKMFG(関西みらいフィナンシャルグループ)の合併だ。関西みらい銀行、みなと銀行がりそなHDの直接の傘下に入り、グループガバナンスが強化され、効率的な「ワンプラットフォーム・マルチリージョナル戦略」が確立に向かう。目指すのは国内での「リテールNo.1」である。
それに先立って2024年1月、東京と大阪のリース会社2社を連結子会社化している。(編集担当:寺尾淳)