■映画、スマホ底打ちで「ソニー業績大復活」の年か?
ソニーグループの2024年3月期の通期業績見通しは、売上高12.9%増、営業利益10.1%減、税引前利益8.9%減、最終利益12.4%減。売上高、税引前利益、最終利益を上方修正しても増収減益になる見通しである。
セグメント別ではゲーム&ネットワークサービスと音楽は増収増益でも、映画は増収減益。
金融は大幅増収でも利益ほぼ半減になる見通し。
ゲームは「プレイステーション・ポータル」の市場投入で「PS5」の年度販売2500万台の目標達成が見込まれ、ソフト「Marvel’s Spider-Man 2」がヒット中。PS5タイトルのクラウドストリーミングが始まるなど2024年も視界良好。映画はハリウッドのストライキが終結して回復軌道。通期減益の元凶だったスマホの完成品、部品は、2024年に中国の需要減退が底を打てば回復できそうだ。車載向けセンサーは好調持続。金融は減益の最大要因だったソニー生命の損益悪化からV字回復できるか。
2024年は映画、スマホの底打ち反転で「ソニー業績大復活」の年になる可能性がある。
■パナソニックの業績は自動車まわりの需要次第か
パナソニックホールディングスの2024年3月期の通期業績見通しは、売上高0.3%増、営業利益38.6%増、税引前利益43.8%増、最終利益73.3%増。EV、車載CASE需要に支えられるオートモーティブ部門、コネクト部門の収益が好調で全体の業績を引っ張り、売上高、営業利益を下方修正しても、なおも大幅増益になる見込み。
2024年も家電などはあまり期待できず、引き続きオートモーティブ部門など自動車まわりに業績が牽引される状況に変わりないだろう。環境対応車など車載CASE向けの電子デバイス、車載電池などが有望である。それ以外では工場の省人化需要で市場が伸びると思われるロボットも期待できそうだ。
■三菱電機の業績拡大の主役は自動車機器になりそう
三菱電機の2024年3月期の通期業績見通しは、売上高3.0%増、営業利益25.8%増、税引前当期純利益21.5%増、最終利益21.5%増と2ケタ増益。業績予測は修正していないが、価格転嫁の効果刈り取りなど収益性の改善施策を着実に推進することで、売上高も利益も過去最高更新を見込んでいる。
伸びている部門はインフラの社会システム、宇宙・防衛システムと自動車機器、空調・家電で、現状の受注が好調なのはEV、ADASの需要が旺盛な自動車機器。2024年の三菱電機の業績拡大の主役はこの自動車機器になりそうだ。この部門では良きアライアンスを組むためのパートナー戦略を進めている。
■シャープはディスプレイと法人向けPCに支えられる
シャープの2024年3月期の通期業績見通しは、売上高0.5%増、営業利益黒字化(400億円)、経常利益黒字化(390億円)、最終利益黒字化(100億円)を見込んでいる。業績修正はない。損益が黒字化するのは、前期に計上した大型液晶パネルの市況悪化などによる減損損失がなくなるため。
セグメント別で営業損益の改善に大きく寄与しているのは高付加価値化が進むスマートオフィスとブランド事業。製品別ではインフォメーションディスプレイ、法人向けのPCで構造改革の効果があらわれており、損益が大きく改善している。2024年の業績もこの両製品が支えることになりそうだ。
■日立製作所は2024年度の業績V字回復が期待できる
日立製作所の2024年3月期の通期業績見通しは、売上収益15.9%減、調整後営業利益3.8%減、税引前当期利益10.4%減、当期利益20.9%減、最終利益19.9%減。業績見通しを上方修正しながらも2ケタ減収減益になる見込み。それでもセグメント別では、大型事業中心に受注が堅調に推移するデジタルシステム&サービス、日立エナジーなどグリーンエナジー&モビリティ部門が増収増益で、中国のロックダウンの反動、為替の円安の好影響も見込めるので、2024年にかけての展望は明るい。
2023年10月に日立Astemoの持分法適用会社化が完了し、2024年前半に鉄道システム事業でタレス社の鉄道信号関連事業の買収が完了する予定で、そうしたM&A効果も加わって2024年度は業績V字回復が期待できそうだ。
■NECは「生成AI」への積極投資が軌道に乗るか?
日本電気(NEC)の2024年3月期の通期業績見通しは、売上収益2.0%増、調整後営業利益7.0%増、最終利益5.4%増の増収増益を見込んでいる。業績予測は修正していない。セグメント別では、ITサービスは民需を中心に国内需要が好調で、それに伴い営業利益も拡大。社会インフラはテレコムサービス、ANSとも増収で、テレコムサービスでは前年度の一過性要因が解消することで大幅増益を見込んでいる。
2024年、NECが積極投資を強調するのが「生成AI」で、世界トップクラスの日本語性能を有する軽量の「LLM(大規模言語モデル)」の開発に成功し、すでにユーザーへの提供を開始している。生成AIを活用するための約110名の専門組織を立ち上げ、企業、自治体、大学との共同プロジェクトも始まっている。
■富士通は行政のデジタル化推進が追い風になるか?
富士通の2024年3月期の通期業績見通しは、デバイス部門の回復の遅れを織り込んで下方修正し、売上収益2.6%増、調整後営業利益0.3%減、最終利益1.9%増で、前回予想と比べると営業損益が減益に変わっている。セグメント別では、サービスソリューションは事業再編による影響を除けば国内市場を中心に2ケタ増収と好調だったが、それ以外はユビキタスは増収増益ながら、ハードウェア、デバイスは減収減益。2024年もサービスソリューション部門が全体の業績を引っ張る状況は変わらないだろう。
2024年は、現在、紙の健康保険証のマイナンバーカード化が話題になっているように、国や自治体の行政のデジタル化がどれだけ進むかにかかっている。官公庁のシステムはスケールが大きいので、富士通の業績へのインパクトは大きくなる。(編集担当:寺尾淳)