中小企業で厚生年金保険料が滞納になり差し押さえによる「社保倒産」が増えている問題が12日の参議院財政金融委員会で取り上げられた。厚労省の巽慎一年金管理審議官は「昨年12月時点で23年度の差し押さえ事業者は3万4000件」と明らかにした。
質問した日本共産党の小池晃書記局長は「社会保険料の取り立てで中小企業を廃業に追い込むことはあってはならない」と指摘し、巽審議官は「経営状況を把握し、納付猶予など緩和制度を適用するよう指導する」と答えた。
鈴木俊一財務大臣は「社保倒産という言葉を最近、新聞見出しなどで拝見し認識している。東京商工リサーチによると令和5年度の社保倒産は8690件、前年度に比べ増加している。数字だけでなく背景もしっかり認識しなければならない。公平性からは納税は義務であり、社会的サービスを支える財源でもあり納税はしっかりやって頂かなければならないが、取り立てが厳しくて破綻に追い込むというのはいかがなものかと思う」とした。
小池氏は今年2月に岩手県で事業規模が2番目だったタクシー会社が社会保険料の滞納で事業継続に必要なタクシーの一部が差し押さえられるなどで倒産、85人の従業員が解雇された事案を紹介した。
小池氏は「差し押さえありきでなく、実情をつかみ、丁寧に対応するよう」求めた。また保険料が高すぎることも指摘した。事業継続が難しくなるようなケースでは社会保険料の猶予は「最長4年」あるが、取り立て実態は厳しいようだ。社保倒産は減る傾向にない。今後は物価高に加え、新たにインボイス等で新たな負担も増えていることからさらに増加も懸念されている。(編集担当:森高龍二)