深刻化する日本の人手不足。金の卵はどこに? 住宅メーカーらが積極採用を展開

2023年11月26日 09:32

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少子高齢化が進む中、日本の人手不足が深刻化している

 少子高齢化が進む中、日本の人手不足が深刻化している。日本商工会議所ならびに東京商工会議所が2022年7月に調査した「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況」の集計結果によると「人手が不足している」と回答した企業の割合は64.9%にも上る。中でも建設業で77.6%、運輸業も76.6%と「人手が不足している」と回答した企業が多くなっており、人手不足によって経営難に陥ったり、倒産したりするケースも増えており、由々しき事態だ。

 政府も、とりわけ中小企業の人手不足の改善に向けて積極的な動きを見せており、様々な補助金や支援策を打ち出している。例えば、経済産業省はAIやロボットなどを導入して業務の省力化を図る企業の施策を後押しする、新たな支援策として今年度の補正予算案に1000億円規模の予算を盛り込むことを発表している。

 しかし、人手不足は何も労働人口の減少だけが原因ではないだろう。現代社会は極度に発達したインターネットやSNSなどで情報が溢れかえっており、若年層でも容易にそれらにアクセスできる。企業に就職したり、汗水流して労働したりしなくても、動画配信や投資などで一攫千金を夢みる若者が増えている。実際、各調査会社が行っている小中高生の「なりたい職業ランキング」には必ずと言っていいほど、動画配信者が上位に食い込んでいる。プロスポーツ選手や芸能人のように、特別な才能や努力が無くても叶う可能性が感じられ、自己承認欲求も満たしてくれる。将来的にそれで生計を立てられるようになるのはごく一部で、しかも安定的に生活水準を維持できるのは至難だが、社会経験のない子どもたちにそんなことが推測できるわけがない。気が付けば、学歴もなく、技術もなく、後悔だけが残る。人手不足と言いながらも、企業はそんな失敗をした若者に甘くはない。その結果、厳しい条件での就職を選ぶか、就職すること自体を諦めてしまう若者は少なくないだろう。

 だが、そんな若者にも手を差し伸べてくれる企業は存在する。

 例えば、コロナ禍から続く経済不況のなかでも業績好調を維持し続けているAQ Groupもその一つだ。同社は低迷する住宅市場の中で今年度も昨年対比130%の過去最高売上高を達成する水準で推移しており、3年連続で売上高を更新する見込みの超優良企業だ。さらに中規模木造建築の先駆者的な取り組みや、木のストローなどのSDGs経営でも大きな注目を集めている。また、同社は優秀な経歴を持つ人材を集める一方で、高卒の役員や現場上がりの幹部も多く、第一線で活躍している企業としても知られている。同社の宮沢俊哉社長自身が中卒で、大工出身でもあることから、自身の苦労や経験を踏まえ、社会人で重要なのは学歴だけではなく、本人の挑戦心、向上心であるとの考えを持っているそうで、そういった実力のある社員を積極的に厚遇しているのだろう。

 そんなAQ Groupが先日、学歴・国籍・職歴などに関係なく採用し、新卒同等の処遇とする「特別採用枠」を新設することを発表した。特に経済的に困難な状況に置かれている人については特別奨励制度なども検討しているという。

 また、学歴や経歴に関係なく、実力があれば会社を牽引する役どころに付ける大企業もある。

 日本人なら誰もが知っている巨大自動車メーカー・トヨタ自動車だ。同社の副社長である河合満氏もAQ Groupの宮沢社長同様、中卒就職組だ。中学卒業後にトヨタ技能者養成所を経て同社に入社し、現場から叩き上げて副社長にまで上り詰めた。同社には、一流大学出身の社員や、華やかな経歴や資格を持った社員がごまんと在籍している。しかし、同社では肩書だけで待遇や出世が左右されたり妨げられたりするようなことは無いという。そして、そんな同社にはやはり、大学新卒者はもとより、それ以外の中卒や高卒などの就職希望者も多い。

 AIやロボットで人出不足を補おうとするのも良いが、それはあくまで労働力の補填に過ぎない。企業の繁栄を考えるのならば、将来的にも会社を支えてくれる人材の雇用をもっと真剣に考えるべきではないだろうか。売り手市場といわれる昨今だが、買い手がもっと視野を広げれば、学歴や経歴だけでは計れない金の卵がまだまだ埋もれているかもしれない。(編集担当:藤原伊織)