長期にわたって物価の変動が少ない食品、卵やもやし、豆腐が「物価の優等生」と呼ばれて久しいが、この豆腐が「優等生」の枠から「卒業」してしまうかもしれない。
株式会社帝国データバンクが豆腐屋の倒産発生状況について調査したところによると、2023年1月から5月の間で8件発生している。2022年の総件数11件に匹敵する過去最多ペースの増加ぶりで、このペースだと過去最多の倒産件数となった2014年を上回る可能性があるという。
理由は大きく分けて2つある。まず、豆腐の主原料である大豆の価格が高騰し、コストが急増したこと。スーパーマーケットの店頭で売られているパック豆腐の多くは、米国産などの輸入大豆を使用している。しかし現在の日本の加速する円安進行やウクライナ危機に端を発する世界的な大豆の需要増、中国からの大豆輸入量増加といった要因のために、5年間で価格は約2倍にもなった。
国産の大豆も生産量が安定しないため高止まりが続き、結果として2023年1月から5月までの豆腐1丁あたりの大豆の原価率が、コロナ前の6~7%を大幅に上回る11%(推定)に急激に上昇している。しかも、近年は大豆の価格だけでなく、加工のための電気・ガス料金や物流費などの流通コストも共に上昇しているのである。
もう1つが価格転嫁力が弱いことだ。豆腐は売価の低い日配食品で低価格競争にさらされ、値上げがしづらい。加えて卸先もスーパーマーケットなど限定されているために、販売価格に価格しづらく利益が出にくい構造にある。その上でコスト上昇とあって、企業の努力で吸収できる範囲を超えた地方の豆腐屋から倒産に至っていると考えられる。
2023年に値上げを予定している食品は3万品目に上るということもあり、大手の豆腐屋を中心に価格引き上げの動きが見られる。スーパーマーケット側も価格転嫁せざるを得ない豆腐屋の事情に協力的なケースが多い一方で、一部では目玉商品として、価格据え置きで内容量を減らす「減量値上げ」で対応できないかという反応もあるようだ。
豆腐の売価はほぼ横ばいのまま現在まで至っているが、豆腐屋の企業体力も限界に近付いている。スーパーマーケットなどは交渉のハードルが高く難航が予想されるが、適正価格に転嫁できるよう値上げの理解をいかに得られるかが、今年の倒産数、ひいては今後の豆腐の安定供給にも影響を及ぼすと思われる。(編集担当:久保田雄城)