日本の商用車メーカー大手4社のうち日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが、経営統合すると発表し、業界の再編として大きな話題になったのは2023年春だった。両社は統合による規模の拡大によって、脱炭素に向けた電動化の推進やドライバー不足解消の切り札となる自動運転技術の開発などを推し進めるとしていた。
当時の発表によると、日野の親会社であるトヨタ自動車と、三菱ふそうの親会社の独ダイムラートラックが共同で持ち株会社を設立し、日野と三菱ふそうを傘下に置く。両社のブランドは維持する。2024年中の統合実現を目指すというものだった。4社が揃った会見のなかでは、トヨタとダイムラーも次世代技術の開発で提携し、4社で次世代商用車開発で協業するとした内容も含まれていた。
しかし、日野自動車の米国向け大型エンジンの排ガス認証問題などに対する米当局の調査が継続。北米や豪州で提起された集団訴訟なども影響し、2024年2月に前述の経営統合計画を無期限で延期していた。
日野がこの春発表した2024年度(2024年4月~2025年3月期)の決算は、認証不正問題においてアメリカ当局に巨額の制裁金を払うことなどで、過去最大の2177億円の赤字を計上。しかしながら、米当局との和解が成立。エンジンの排ガス認証問題が終結したことで、問題の対応に一定の目途が立ったとして、2025年度については200億円の黒字に転じる見通しを示している。その結果、今回「日野+FUSO」経営統合協議が大きく前進する見通しとなった。
世界的に商用車が排出する二酸化炭素(CO2)の削減は喫緊の課題だ。2021年度経産相の統計によると運輸部門のCO2排出量のうち、約4割を貨物車が占めているという。乗用車より大きく重く、耐久性やパワーが求められる商用車は電動化へのハードルが高い。巨額の開発資金を1社で賄うのは容易ではない。
カーボンゼロへの対応や物流を担うトラックの自動運転などを巡り、運送業界も変革期にある。今回の統合の狙いは、両社を含む4社の技術を結集し、商用車の国際競争力を高めることにある。(編集担当:吉田恒)