実質賃金の最新動向 名目賃金上昇と物価変動が家計に与える影響

2026年02月26日 07:37

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実質賃金のマイナス圏推移、2026年春闘がプラス転換の鍵に 賃上げと物価の現状

今回のニュースのポイント

・実質賃金の停滞:2026年に入り、企業の賃上げ回答が相次ぐ一方で、家計の購買力を示す「実質賃金」は依然としてマイナス圏での推移を記録しています。

・中小企業の構造的課題:この背景には、労働者の約7割が属する中小企業において原材料高の「価格転嫁」が十分に進まず、賃上げ原資が確保できていない実態があります。

・プラス転換の時期が焦点:今後の焦点は、現在進行中の2026年春闘の結果が社会全体に波及し、物価上昇率を賃金の伸びが追い越す「プラス転換」がいつ実現するかという点に集約されます。

 2026年に入り、厚生労働省が公表する統計において、額面通りの給与を示す名目賃金の上昇が続く一方で、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年割れが継続しています。この購買力の停滞は、個人消費の回復を遅らせる要因として指摘されており、2026年春闘の結果が社会全体に波及し、実質賃金がプラス転換するかどうかが日本経済の最大の焦点となっています。

 実質賃金は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」における現金給与総額から消費者物価指数の変動分を差し引いて算出される指標であり、労働者が受け取る給与の実際の購買力を示すものです。2024年以降、日本国内では30年ぶりとも言われる歴史的な高水準の賃上げが実施されてきましたが、エネルギーや食料品を中心とした物価上昇のペースがそれを上回り続けたことで、生活実感としての購買力改善には至っていない状況が鮮明になっています。

 この賃上げが物価に追いつかない背景には、複数の構造的要因が介在しています。第一に、円安や国際商品相場の高騰に伴う輸入物価の上昇が、家計の負担を直接的に押し上げたことが挙げられます。第二に、全労働者の約7割が属する中小企業の収益構造です。大手企業が過去最高益を背景に大幅な賃上げを実施する一方で、多くの中小企業は労務費や原材料費のコスト増を取引価格に十分に転嫁できておらず、賃上げの原資を確保できないという課題に直面しています。

 現在の2026年春闘を巡る議論においては、大きく分けて二つの視点が存在します。賃上げの加速を求める見解は、実質賃金のプラス転換こそが消費を活性化させ、デフレからの完全脱却を可能にする唯一の道であると主張しています。深刻な人手不足が続く中で、優秀な人材を確保するためには、物価上昇分を上回るベースアップが不可欠であるという考え方です。これに対し、経営側からは一律の賃上げ要請に対する慎重な声も上がっています。原材料高に加えて賃金コストが急増すれば、事業継続が困難になる恐れがあり、生産性の向上を伴わない賃上げは持続可能ではないという指摘です。

 今後の日本経済において、実質賃金が2026年中にプラスへと転換するかどうかは、先行きを占う上で最大の分岐点となります。政府は、労務費の転嫁指針の徹底や中小企業への支援策を通じて、賃上げの波を波及させようとしています。今後の焦点は、春闘の集計結果が中小企業においてどの程度の水準で着地するか、そして為替や国際情勢の落ち着きによって物価上昇率が鈍化に向かうかという点に集約されます。実質賃金の推移は、日本銀行が金融政策の正常化を進める上での判断材料として、引き続き各方面から注視される見通しです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)