警備業の倒産・廃業が過去最多水準。人手不足と「AI格差」で進む中小の淘汰

2026年04月05日 20:12

今回のニュースのポイント

倒産・休廃業が過去最多水準を更新:2024年の警備業の倒産・休廃業・解散は計138件に達し、2000年以降で最多となりました。

「人がいない」構造的な労働力不足:警備業の有効求人倍率は約6.7倍と全職業平均(1.10倍)の約6倍に達しており、需要があっても応えられない状況が続いています。

テクノロジー投資による二極化:AI監視やドローンを導入できる大手と、投資余力のない中小の間で「テック格差」が広がり、業界の集約が進んでいます。

 警備業界では現在、市場自体は堅調に拡大している一方で、経営基盤の弱い中小・零細企業の退出が進む転換期を迎えています。東京商工リサーチの調査によれば、2024年の警備業の倒産(16件)と休廃業・解散(122件)は計138件に達し、比較可能な2000年以降で最多記録を更新しました。2025年度(2025年4月~2026年2月)の倒産もすでに20件に達しており、過去20年間最多ペースで推移するなど、コロナ後の需要回復の裏側で、業界の再編が鮮明になっています。

 この構造変化の背景にある最大の要因は、全産業の中でも突出した人手不足です。厚生労働省や警察庁の統計に基づいた業界分析では、警備員を含む「保安職」の有効求人倍率は約6.7倍とされ、全職業平均(約1.1倍)の約6倍という極めて高い水準にあります。屋外勤務や夜勤といった身体的負担の大きさと賃金水準のミスマッチから若年層の流入が細り、現場では60代以上の警備員が大きな割合を占め、70代以上も一定数に達するなど、高齢層への依存が進んでいるのが実情です。

 さらに、業界を二分しているのがテクノロジー投資の格差です。最大手のセコムやALSOKなどは、AIによる映像解析や自律走行ロボット、ドローンなどを活用した省人化・高付加価値化に取り組んでいるとされ、巡回・監視業務の一部自動化が進んでいます。一方、多くの中小企業は人件費の上昇に対応するのが精一杯で、システム投資や人材育成に回す余力がありません。省力化投資を進められる企業とそうでない企業の差は今後さらに広がる可能性があり、大手優位の寡占化が一段と進むことが懸念されています。

 警備業は、ビル施設からイベント会場、道路工事の交通誘導に至るまで、私たちの社会インフラを支える「安全の足場」です。しかし、中小の倒産や廃業が相次ぎ、一部の有力企業へ集約が進むことで、地方での警備員確保が困難になったり、発注単価が急上昇したりといった影響が出始めています。安全コストの上昇は、ひいては公共工事の遅延やイベント運営の負担増として生活者にも跳ね返ってきます。

 今後の警備業は、従来の労働集約型モデルから、AIやロボットを前提とした「サービス産業」へと脱皮を図る段階にあります。人手不足で人を増やせず、投資負担で中小が持たず、テクノロジーが競争力に大きな影響を与える現在の構図は、まさに日本全体の中小企業や労働市場が直面する課題の「縮図」とも言えます。安全という当たり前のインフラを維持するために、業界再編とデジタル化の波は避けて通れない局面に入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)