今回のニュースのポイント
国内開発未着手の28品目を特定:2021年から2023年3月までに欧米で承認された医薬品のうち、日本で「国内開発が未着手」のままになっている実態が浮き彫りとなりました。
6品目を「最優先開発」相当に分類:学会等のニーズに基づき、前立腺がんや難病の治療薬など6品目を「開発の必要性が特に高い(グループA)」または「高い(グループB1)」と位置づけました。
制度とビジネスの乖離が背景に:開発コストに対する市場規模の小ささや、承認審査に必要なエビデンスの不足が導入の壁となっています。
海外では標準的に使われている最新の医薬品が、日本では開発すら始まっていない――。この「ドラッグ・ロス」の深刻な実態が、厚生労働省の最新調査で明らかになりました。今回の調査では、2021年1月から2023年3月までに欧米で承認された医薬品を対象に精査が行われ、2025年3月末時点で日本国内での開発が未着手のままの医薬品が28品目確認されました。
調査結果では、これらの未着手薬を医療上のニーズに基づき分類しています。その結果、5品目が「グループA(開発の必要性が特に高い)」、1品目が「グループB1(開発の必要性が高い)」と判定され、計6品目が最優先で開発すべき薬剤として特定されました。これらの中には、前立腺がんのPET診断薬(PYLARIFY)や、難病であるCDKL5欠損症に伴う発作治療薬(ZTALMY)、さらに極めてまれな先天性代謝異常「A型モリブデン補酵素欠乏症」の治療薬(NULIBRY)などが含まれています。
なぜ、こうした重要な薬の導入が遅れるのでしょうか。その構造的背景には、製薬企業の採算性と日本の承認制度の厳しさという二重のハードルがあります。希少疾患や特定のがんは患者数が極めて少なく、多額の開発費に対して国内の市場規模が小さいため、企業が投資に慎重にならざるを得ない側面があります。また、未着手薬のうち10品目(グループB2)は、開発の必要性自体は高いものの、未承認薬検討会議で医療上の必要性を評価するために必要な欧米の臨床試験やガイドラインといったエビデンスが不足しているとされ、直ちに開発要請を出せない状況にあります。
このドラッグ・ロスは、日本の患者にとって「治療の選択肢が世界標準より少ない」という、命に直結する格差を生んでいます。特に標準治療がない疾患の患者にとっては、海外にある唯一の治療薬が届かないことは切実な問題です。
今後、厚生労働省は優先度の高い6品目について「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で改めて評価を行い、必要性が認められたものから国内企業への開発要請や公募を進める方針です。また、2026年度(令和8年度)以降の調査事業においても、エビデンス不足とされた品目を含め引き続き情報収集を継続することとしており、国を挙げて解消に向けた制度見直しが進む局面に入りつつあります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













