伝統産業の変革 白鶴酒造が示す「働きやすさ」を経営戦略に据える構造

2026年04月12日 09:21

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白鶴酒造が示す「働きやすさ」の構造。伝統産業で進む女性活躍と育休

今回のニュースのポイント

男性育休取得率が50.0%に到達:初回認定時の37.5%から大幅に上昇し、厚生労働省の調査による製造業平均30.1%の約1.6倍という高い水準を実現しています。

女性管理職比率は12.4%へ上昇:課長職以上の女性比率も9.3%から向上し、製造業平均の8.3%を上回る結果となりました。

酒造りの現場で女性が約3割活躍:男性中心と思われがちな醸造現場(本店三号工場)において、従業員の約3割にあたる10名の女性社員が活躍しています。

 日本企業において、働き方の変化が加速しています。最新の政府統計では、管理職に占める女性比率は12%台、男性の育休取得率も4割に達するなど、ここ数年で着実な変化が現れています。

 一方、製造業に目を向けると、女性社員の比率がもともと低い職場が多いことや、長時間労働を前提とした業務慣行などを背景に、管理職に占める女性比率は8.3%、男性の育休取得率は3割程度にとどまっています。しかし、こうした課題は近年、深刻化する人手不足や採用競争の激化を背景に、「人材をどう確保し、いかに生産性につなげるか」という経営課題として捉え直され始めています。その結果、働き方改革は、もはや制度づくりの枠を超えて経営戦略の中核に位置づけられつつあります。

 このマクロな流れを、伝統産業である酒造りの現場で体現しているのが白鶴酒造です。同社は今回、兵庫県・神戸市の女性活躍推進認定制度「ミモザ企業」で再認定を受けましたが、注目されるのはその実績です。男性の育児休業等取得率は50.0%、女性管理職比率は12.4%と、いずれも製造業平均を大きく上回っています。

 同社の取り組みを紐解くと、ポイントは制度が「ある」だけでなく「使える」設計になっている点にあります。育児休業については対象者への個別説明を実施し、取得に伴う心理的ハードルを下げています。時間単位で取得できる有給休暇や、失効する有給休暇を一部積み立て、介護や育児などの目的で使用可能な積立有給休暇のほか、2025年11月からは取得理由の申告を不要とする無給の特別休暇「ライフサポート休暇制度」を新設しました。これらの制度により、仕事と育児・介護の両立を支援する環境が整ってきています。

 また、伝統的な「酒造りの現場」でも女性が働きやすい職場環境づくりに力を入れています。同社で年間を通して日本酒を造っている主力工場「本店三号工場」では、女性専用宿直室の整備、現場の女性が最も負担に感じやすい「力を要する作業」の改善など環境改善を進めた結果、約3割を女性が占めるようになりました。現場の受け入れ体制を整えることで、従来は難しいと考えられてきた職域にも、多様な人材が参画できる土壌が生まれています。

 経済的な視点で最も重要なのは、こうした「働きやすさへの投資」が「採用コストの削減」「離職リスクの防止」「生産性の維持」に直結し、企業の利益に結びつく構造が生まれていることです。人材獲得競争が激しくなるなか、「どれだけ人が働き続けられる環境を設計できるか」は、もはや製品や価格と同じくらい重要な競争軸になっています。

 白鶴酒造のような伝統産業での成功事例は、今後の製造業全体や中小企業への強いシグナルとなります。「人手が確保できなければ製品を作れない」という時代において、柔軟な働き方の設計は、企業の持続性そのものを左右する不可欠な要素になりつつあります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)