日本人の「スキルアップ意欲」世界最下位。背景に「権威主義・責任回避」の組織文化

2022年11月29日 07:17

画・日本人の「スキルアップ意欲」世界最下位。背景に「権威主義・責任回避」の組織文化。

パーソル総合研究所が世界18カ国の就業実態・成長意識について調査。日本人の「自己成長志向」は最下位。自己研鑽意欲の低さが際立つ

 日本の国際競争力の低下、その背後にあるスキル不足が指摘されてから久しい。コロナ禍で日本のDXの遅れが強く意識され、多くの企業がDXに取り組んでいるが、そこで課題となっているのはスキル人材の不足だ。パーソル総合研究所のグローバル調査によれば、日本の勤労者の自己研鑽意欲、スキルアップ意欲が調査対象国の中で最も低くなっている。その背景と考えられる要因として、日本の組織文化は「権威主義・責任回避」の傾向が他国と比べ著しく強く、日本のダイバーシティとインクルージョンの実現度合いは世界平均より大幅に低い。また、「シニア層」の働きやすさが「若手」の働きやすさを上回る点が特徴となっている。

 11月8日、パーソル総合研究所がAPACおよび欧米地域、世界18カ国・地域の「グローバル就業実態・成長意識調査」(調査期間:2-3月、サンプル数:各国約1000)の結果を公表している。これによれば、「働くことを通じた成長を重要だと感じるか」という問いに対して、「重要だ」と考える者の割合は、世界平均93.2%に対して日本は79.5%と最も低くなっている。トップはインドネシアの99.3%で、下位から2番目のオーストラリアは89.3%と日本と比べ約10%の差がある。仕事を通じた「成長を実感しているか」という問いでも、世界平均81.3%に対し日本は52.6%と著しく低く最下位だ。

 勤務先以外での学習・自己啓発に関しては、「特に何もおこなっていない」の割合が世界平均18.0%に対し、日本は52.6%で最も多く、自己研鑽意欲の低さが際立っている。「組織文化」の特徴をマッピングした結果では、「日本」は「韓国」と並び「権威主義・責任回避」に特徴づけられているが、韓国では自己研鑽意欲の低さは見られない。「オーストラリア」、「アメリカ」、「イギリス」など欧米圏では個人を尊重した柔軟なマネジメント、「インドネシア」、「フィリピン」、「マレーシア」、「ベトナム」など東南アジアは組織の調和を重視した自由闊達な風土に特徴づけられている。

 「女性」「若手」や「外国人」などの働きやすさについては「日本」は全体平均を下回り、ダイバーシティとインクルージョンの実現度が低くなっている。ただし、「シニア層」の働きやすさは世界平均に近い一方で、「若手」では世界平均を大きく下回っている。主任研究員の井上亮太郎氏は「現在の日本の就労者も含めて多様な人材が活躍しやすい環境の見直しを」とコメントしている。(編集担当:久保田雄城)