日本の長時間労働の是正について国連が2013年に日本政府に対して行った勧告を契機に政府主導で始まった働き方改革は、現在では多くの企業、団体で取り込まれている。長時間労働是正を目的とした改革のため、当初は残業規制や休暇取得の促進がメインであったが、人手不足を背景に人材確保や離職防止を狙ったより働き安い職場の構築のためにダイバーシティやテレワークなど様々な取り組みに広がりを見せている。
オフィス機器・設備関連事業のイトーキが5月に働き方改革に取り組んでいる企業の従業員850名を対象に「働き方改革と働きがいに関する調査」をインターネット上で実施、その集計結果を6月25日に公表している。
働き方改革の進捗状況に関する従業員の認識は55.8%の者が「改革は進んでいる」と考えており半数以上の企業で実効的に改革が進んでいるようだ。
改革の内容について複数回答で答えてもらった結果では「休暇取得の促進」が84.0%と断トツで多く、次いで「残業禁止」40.5%、「フレックス導入」40.5%、「早帰り日の設定」38.1%、「ダイバーシティ促進」37.6%の順となっている。一方、「IT課促進」30.7%、「オフィス改善」30.5%、「テレワーク導入」26.6%など生産性向上、多様な働き方に関するものは相対的に少ないようだ。
改革によって「働き安くなったと感じるか」という質問に対しては、「改革が進んでいない」と回答した者では「働き安くなったと」と答えた者は10.6%のみであるのに対して、「改革が進んでいる」と答えた者では44.1%と多くなっており改革の取り込みには「働きやすさ向上」に一定の効果があるようだ。
しかし一方で、改革によって「仕事量が増えた」と答えた者の数は「仕事量が減った」と答えた者の3.4倍に達し、また「収入が減った」と答えた者が「収入が増えた」と答えた者の2.6倍に達しており、改革によって労働時間は短縮されたものの労働生産性の向上は十分に達成されておらず、業務量や収入低下にしわ寄せが来ている実態がうかがえる。たしかに、上記でも示したとおり働き方改革の一環として「IT化推進」など生産性向上への取り組みはあまり活発ではない。
「働きがいを重要視しているか」との問いに対しては、91.2%とほとんどの者が「働きがいを重視しており」、改革によって「働きがいは向上したか」という問いに対しては「向上した」と回答した者は約3分の1にあたる34.2%にとどまったものの、改革が「働きがいの向上」にも一定の効果を持っていることを示唆している。(編集担当:久保田雄城)