今回のニュースのポイント
デジタル遺言(保管証書遺言)の創設へ:法制審議会(法務大臣の諮問機関)の部会は2026年1月20日、スマホやPCで作成できる「保管証書遺言」の創設を柱とする民法改正の要綱案を取りまとめました。
「全文自筆」の壁を緩和:原則として全文自筆が求められ、不備による無効や紛失が課題だった自筆証書遺言の使い勝手を、デジタル化によって大幅に改善します。
2025年10月からのオンライン化先行:公正証書遺言については、公証人との面談や署名をオンラインで行える「デジタル公正証書遺言」が先行して導入される予定です。
デジタル資産の可視化と継承:暗号資産やネット証券など、死後に遺族が把握しにくい「見えない資産」のトラブルを防ぐ手段として期待が集まっています。
遺言をスマートフォンやパソコンで作成し、オンラインで管理する――。これまで「紙と印鑑」が鉄則だった相続の仕組みが、大きな転換期を迎えています。法制審議会(法務大臣の諮問機関)の部会は、2026年1月20日に、パソコンやスマートフォンで作成する「保管証書遺言(デジタル遺言)」の創設を柱とする民法改正の要綱案を取りまとめました。政府は今後、法制審の答申を踏まえて改正法案を国会に提出し、公正証書遺言のオンライン化を含むデジタル化を段階的に進める方針です。
こうした動きの背景には、深刻な高齢化と「おひとりさま」世帯の急増という、避けては通れない社会ニーズの変化があります。現行の自筆証書遺言は、原則として全文を自筆し日付と署名・押印を求める形式で、方式不備による無効や紛失リスクが長らく課題とされてきました。地方在住者や高齢者にとって、公証役場へ足を運んだり証人を立てたりする手間も大きな負担となっており、デジタル化によってこうした「最初の一歩」の壁を崩し、遺言の普及を促す狙いがあります。また、2025年10月以降、公正証書遺言については、公証人との面談や署名をオンラインで行える「デジタル公正証書遺言」が導入される予定で、従来の対面手続きから大きく一歩を進めることになります。
さらに、私たちの資産そのものがデジタル化している現実も無視できません。ネット証券やネット銀行、暗号資産、さらにはサブスクの契約など、死後に家族がその存在にすら気づけない資産が急増しています。特に暗号資産の相続では「パスワードが分からず引き出せない」「存在すら知らなかった」といったトラブルが相次いでいることが問題視されており、ネット銀行や証券口座も含めた「見えない資産」をどう可視化するかが喫緊の課題になっています。これらデジタルデータと親和性の高いデジタル遺言で一元管理することは、現代の資産構成における必然的な流れとみられます。
もちろん、デジタル化には特有の課題も伴います。最大の懸念は「なりすまし」や「データの改ざん」、あるいは「第三者に強要されたのではないか」という信頼性の問題です。これを克服するため、マイナンバーカードなどによる電子署名や、遺言内容を口述する様子の録音・録画、公的機関でのデータ保管といった仕組みが検討されています。一部の専門家からは、将来的な技術選択肢としてブロックチェーン活用を指摘する声もあり、紙と同等以上の真正性をいかに担保するかが制度設計の焦点となっています。
デジタル遺言の仕組みが整えば、作成から保管、相続人への通知までを一体的に管理できる可能性が高まり、「遺言書が見つからない」「一部の相続人だけが保管し他者に知らせない」といった従来型のトラブルを減らす効果も期待されます。相続を「重い手続き」から「透明性の高いデータ管理」へとアップデートすることで、家族のあり方や資産の持ち方が多様化する現代において、死後の意思を正確かつ手軽に次世代へつなぐ仕組み作りが、今まさに本格化しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













