今回のニュースのポイント
将来的に90%のモデルにAIドライブ技術を搭載:日産は長期ビジョンにおいて、AIを核としたAIディファインドビークル(AIDV)を中核に据える方針を発表しました 。
商品ポートフォリオを45車種に最適化:モデル数を56から45へと絞り込み、低収益モデルからの撤退と成長分野への投資強化を同時に進めます 。
次世代自動運転技術の導入:2026年夏発売予定のエルグランドには、2027年度末までにエンド・ツー・エンドの自動運転を実現する次世代プロパイロットが導入される計画です 。
リード市場を軸としたグローバル戦略:日本、米国、中国をリード市場と位置づけ、世界販売の80%以上を共通アーキテクチャー主導の開発モデルで担う目標を掲げています 。
自動車は何で競う時代になったのか。日産自動車が発表した新たな長期ビジョンは、その問いに対する一つの答えを示しています。同社は「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」というビジョンのもと、AI(人工知能)を中心に据えたAIディファインドビークル(AIDV)を事業の中核に据えることを発表しました。これは、自動車が単なる移動手段から、ソフトウェアによって進化し続けるデバイスへと変貌を遂げる産業構造の転換を示しています。
日産が打ち出した戦略の柱は、AI技術の圧倒的な普及とモデルの精査です。長期的に自社ラインアップの約9割にAIドライブ技術を搭載することを目指し、並行して商品ポートフォリオを現在の56車種から45車種へと最適化します 。パワートレインにおいても、独自のe-POWERを軸に、市場のニーズに応じてハイブリッド(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)、レンジエクステンダー(REEV)など多様な選択肢を拡充しつつ、日本、米国、中国をリード市場とする体制を構築します。
この変革の中心にあるAIDVというコンセプトは、クルマの価値をハードからソフトへシフトさせるものです。AIDVは、AIドライブ技術とAIパートナー技術を組み合わせることで移動そのものを進化させ、移動時間をより価値の高い体験へと変えていくことを目指しています。象徴的な事例として、2026年夏に発売予定の新型エルグランドは、今後の商品ライフサイクルの一環として、2027年度末までにエンド・ツー・エンドの自動運転技術を実現する次世代プロパイロットを導入する計画とされています 。これは、一度販売した車両の機能がソフトウェアのアップデートによって継続的に進化していく未来を示唆しています。
なぜ、今これほどまでにAIが重視されるのでしょうか。それはAIドライブ技術が、より安全で直感的な運転体験を提供し、従来の物理的な性能とは異なる新たな競争軸を創出するからです。また、AIパートナー技術は移動中の行動支援や暮らしとの連携を通じて、車内を生活やエンターテインメントの場へと変え、お客さまの体験価値を高めていく役割を担います。
日産は共通の車両プラットフォームやソフトウェア基盤を活用したアーキテクチャ主導の開発へ移行し、3つの商品ファミリーでグローバル販売の80%以上を担う目標を掲げています。これにより、開発スピードの向上とモデルあたりの販売台数の拡大を図る考えです 。個別の車種開発に注力する従来のスタイルから、OSやソフト、データ連携を共通化したプラットフォームで効率と速度を競う構図への転換は、IT企業をも含めた新たなプラットフォーム競争を前提とした戦略といえます。
経営面では、低収益モデルからの撤退と集中投資が鮮明になっています 。全45モデルを、日産らしさを体現する「ハートビート」、事業を支える「コア」、需要拡大を担う「成長」、協業による「パートナー」の4カテゴリーに再編しました。例えば、スカイラインは日本におけるハートビートモデル、新型エクストレイルやローグ e-POWERはグローバルのコアモデルとして、それぞれの役割が明確化されています。
本質的に、日産のビジョンが示すのは「車=ソフトウェア」という新しい競争軸です。車両のハードウェアやプラットフォームを共通化し、その上でAIによる制御やUX、サービス連携などのソフトウェアを継続的に更新していくという発想は、車体を器とし、その中身である機能や体験をソフトウェアで差別化するモデルへのシフトと言えます。
今後は、日本市場における次世代プロパイロットの導入やモビリティサービスの展開、2028年度以降のコンパクトカーシリーズ投入などを通じて、2030年度に向けた販売拡大と若年層へのブランド浸透を目指すとしています。クルマを売り切りのモノではなく、自動運転やサービスが統合されたプラットフォームへと変えていくこの流れは、自動車産業全体が直面する不可逆的な転換であるといえそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













