最低賃金1500円に乖離 中小企業4団体が政府へ見直し要請

2026年04月16日 16:34

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賃上げはどう進めるべきか 中小企業の負担が課題

今回のニュースのポイント

中小企業4団体が政府に要望書を提出:日本商工会議所、東京商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会は2026年4月16日、最低賃金に関する要望書を連名で提出しました。

政府目標「1500円」への強い懸念:政府の「2020年代に全国加重平均1500円」という目標に対し、中小企業の経営実態から著しく乖離しているとして、水準の見直しを求めています。

「防衛的賃上げ」が続く現場の限界:人手不足や物価高を背景に賃上げに取り組むものの、業績改善を伴わない「防衛的な賃上げ」の割合が依然として高く、コスト増が経営を圧迫しています。

法定三要素に基づく議論の徹底を要望:賃金、生計費、支払能力の「法定三要素」に基づくデータ主導の議論を徹底し、近隣県との過度な引き上げ競争を抑制するよう訴えています。

 賃上げの必要性が叫ばれる一方で、その進め方に対する懸念も広がっています。日本商工会議所をはじめとする中小企業4団体は、政府が掲げる最低賃金の引き上げ目標や審議のあり方について、強い危機感を伴う要望書を提出しました。

 要望書によれば、深刻な人手不足と物価高騰を背景に多くの中小企業・小規模事業者が賃上げに注力しているものの、業績改善を伴わない「防衛的な賃上げ」の割合は依然として高い状況にあります。円安の進行や不安定な国際情勢によるコスト増も重なり、企業は「成長の果実」を配分するのではなく、雇用を維持するために無理をして賃金を上積みせざるを得ない厳しい経営環境に置かれています。こうした利益が賃金上昇に追いつかない状況が続けば、事業継続そのものが脅かされ、地域経済にも重大な影響が生じかねないとの危機感がにじんでいます。

 こうした背景から、要望書は近隣県との過度な競争意識や知事からの引き上げ要請、目安を上回る引き上げを前提とした支援策の提示などを背景に、各地の地方審議会で国の目安への大幅な上乗せが相次いでいる現状を指摘しています。これらは地域の実態と乖離した引き上げであり、法定三要素(賃金・生計費・支払能力)に基づく審議の原則を歪めていると強く懸念しています。

 最低賃金のあり方について団体側は、「賃上げ実現の政策的手段として用いることは適切ではない」と明確に釘を刺しています。最低賃金は本来、赤字企業を含む全ての企業に強制適用される「労働者の生活を保障するセーフティーネット」であるべきとの考えからです そのため、政府目標である「全国加重平均1500円」は経営実態から著しく乖離しており、労使の代表が意見を述べる機会を設け、支払能力を十分に踏めた水準に見直すべきだと強く求めています。

 また、要望書によれば、中小企業・小規模事業者は労働分配率が7〜8割と高く、労務費を含むコスト増加分の価格転嫁が十分に進んでいないという構造的課題を抱えています。人件費だけが一方的に上昇する圧力にさらされる中、賃上げ原資を確保するためには生産性向上や価格転嫁の一層の推進が不可欠です。政府には、助成金や補助金の拡充、取引適正化の実効性確保など、「分配だけでなく、付加価値と転嫁を支える両輪」の支援が求められています。

 現状を踏まえない最低賃金の引き上げは、設備投資の抑制や雇用の喪失を招き、却って地域経済の減退を招くことも懸念されます。要望書では、法定三要素に基づく熟議の徹底に加え、企業の十分な準備期間を確保するために発効日を少なくとも1月以降とすることを基本とするなどの具体的な運用も提案されました。中小企業が自発的・持続的に賃上げを行える環境をどう整えるか、賃上げを持続可能にする制度設計が問われています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)