自賠責保険はなぜ値上げへ? 事故減でも負担増の構造

2026年04月18日 06:47

画・車の運転に「自信ある」者の方が事故の経験が多い。事故経験4割。

事故が減っても保険料は上がる?自賠責が直面する「インフレ」と「赤字構造」の正体

今回のニュースのポイント

損害率は127%超、慢性的な赤字構造:2026契約年度の自賠責保険の損害率は127.3%、収支は1,188億円の赤字が見込まれています。2023年度以降、130%前後の赤字料率が継続している実態があります。

「事故減・支払増」のジレンマ:交通事故件数は長期的に減少傾向にある一方 、医療費の高騰や賃金上昇に伴う補償額(休業損害・逸失利益等)が増加しており、1件あたりの平均支払保険金が膨らむ構造となっています。

滞留資金による「抑制効果」の限界:2022年度末時点で約7,239億円あった余剰資金(滞留資金)を契約者に還元することで保険料を低く抑えていますが、この取り崩しが進むことで、将来的な抑制効果の減退が懸念されます。

インフレが事務経費(社費)を圧迫:保険会社側の事務経費にあたる「社費」も、物価上昇やシステム開発費の増大で収支が悪化。2024年度時点の累計収支残は318億円の赤字に達しています。

 交通事故は長期的に減少しているにもかかわらず、自賠責保険料は引き上げの方向に進みつつあります。金融庁の自賠責保険審議会で示された最新の検証結果からは、制度の仕組みそのものに起因する構造的な課題が浮き彫りになりました

 現在、自賠責保険は極めて特殊な収支状況にあります。2026年度の損害率は127.3%(収支は1,188億円の赤字)と見込まれており、保険料収入を支払保険金が大きく上回る状態が続いています。本来、自賠責保険は「ノーロス・ノープロフィット(利潤も損失も出さない)」の原則に基づき、適正な原価を償う範囲内で収支が均衡するよう保険料が設定されるべき制度です。

 なぜ事故が減っているのに赤字が続くのでしょうか。背景には、事故1件あたりの支払額の増加があります。交通事故件数や死者数は減少傾向にありますが、物価や賃金の上昇に伴い、医療費や介護費、さらに補償の基礎となる単価が押し上げられています。いわば「事故は減るが、救済のコストは上がる」構造への変化です。

 現在の低い保険料水準を支えているのは、過去の余剰資金である「滞留資金」です。約7,239億円(2022年度末時点)の滞留資金を、2023〜2027年度の5年間で契約者に還元する前提で、現行の基準料率は予定損害率133.5%という「意図的な赤字料率」に設定されています。これによってユーザーの負担を抑えてきましたが、この資金の取り崩しが進んでおり、抑制効果はいずれ限界を迎えます。

 さらに、保険会社側の事務コストである「社費」も、インフレの影響で支出が増加し、2024年度時点で318億円の累計赤字を抱えるなど、制度運営の基盤を圧迫しています 。自家用乗用車(24か月契約)の基準料率は、2008年度の3万1,730円から現在は1万7,650円と段階的に引き下げられ、史上最低水準にありますが、こうした「安価な自賠責」の継続は転換点を迎えつつあります。

 今後の焦点は、次回の料率改定のタイミングとその幅です。審議会では、業界共同システム「One-JIBAI」の導入や車検期間の拡大を踏まえ、新料率の適用開始を従来より4か月後ろ倒しにするスケジュール案も示されました。Web手続きやクレジットカード払いといった利便性向上も進んでいますが、それは同時にシステムコストの増大も意味します。エネルギー価格や物価の上昇が続けば、こうしたコスト増が将来的にインフレ要因の一端となる可能性も否定できません。自賠責保険の議論は、事故が減っても社会全体で支える救済コストは減らないという、構造的な課題を示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)