売上回復でも利益圧迫キャッシュレスの見えないコスト

2026年04月18日 19:30

画・ICクレシ_ットカート_、認知率82.5%、保有率71.2%

「増収なのに赤字」の背景に複合的コスト増決済手数料が変えた利益の数式

今回のニュースのポイント

「増収減益」企業の二極化が鮮明に:東京商工リサーチ(TSR)の分析では、コロナ後に行動制限が緩和され売上が回復する一方で、利益が伸び悩む企業が目立っています。タクシー業界の事例では、主なタクシー会社約680社のうち約3割が赤字という実態が判明しました。

支払手数料は10年で約45%増:帝国データバンク(TDB)の調査によると、小売業の売上高に占める「支払手数料」の割合は、2014年度の1.41%から2024年度には2.04%へ上昇。特に飲食店では2.94%と、10年前からほぼ倍増しています。

複合的なコスト増が収益を圧迫:人流回復に伴う人件費や燃料費の高騰に加え、キャッシュレス決済の浸透による手数料負担が、利益率の低い業態の収益を押し下げる一因となっています。

インフラとしての持続可能性に課題:政府が2030年にキャッシュレス比率65%を目指すなか、手数料構造の透明化や、バリューチェーン全体でのコスト分配の再設計が議論の遡上に載っています。

 売上は回復しているのに利益が伸びない――。小売やサービス業を中心に、こうした「増収減益」の傾向が強まっています。東京商工リサーチ(TSR)の業績分析では、人件費や燃料費といったコストの高騰に加え、キャッシュレス決済の普及に伴う手数料負担が、徐々に企業の収益を圧迫している実態が浮き彫りになりました。

 事実、タクシー業界などの事例では、人流回復により売上が戻っているにもかかわらず、主なタクシー会社約680社のうち約3割が赤字という厳しい状況にあります。こうした背景には、コロナ後の人流回復に伴う需要増への対応コストがあるほか、キャッシュレス決済の急速な普及に伴い、これまで現金中心だった決済の一部が手数料の発生する形式に置き換わっている点も、店舗側の収益構造に影響を与えています。

 帝国データバンク(TDB)が発表した「小売業『支払手数料』比率調査」によれば、小売業全体の売上高に対する支払手数料(決済手数料やEC出店手数料等を含む)の比率は、2014年度の1.41%から2024年度には2.04%へと、10年間で約45%増加しました。特に少額決済が頻繁に発生する飲食店では、2014年度の1.54%から2.94%へとほぼ倍増しており、売上を伸ばそうとすればするほど決済コストが収益を削る構造的なジレンマに直面しています。

 現在のビジネスモデルでは、消費者が「利便性やポイント還元」を享受し、決済事業者が「取扱高連動の手数料収益」を得る一方で、その決済インフラにかかる費用の多くを加盟店側が負担する構図が一般的です。こうした局面では、もともと利益率の低い薄利多売の業態ほど、数%の手数料負担が経営に与える影響は大きくなります。実際に現場では、手数料負担の重さから「少額決済はなるべく現金で」といった切実な声も聞かれ、利便性とコストのバランスが改めて問われています。

 社会・生活への影響も無視できません。コスト増を吸収できない店舗では、商品価格への転嫁やサービス内容の選別といった形で、最終的に消費者側へ影響が波及する可能性があります。経済産業省が公表した統計では、2025年の国内キャッシュレス決済比率が58.0%に達したことが示されていますが、今後の中間目標である2030年の65%達成に向け、インフラとしての持続可能性が焦点となっています。

 今後の焦点は、決済インフラとしての「負担の再設計」です。経済産業省の検討会でも手数料構造の透明化が議論されており、EU(欧州連合)で導入されているクレジットカードなどのインターチェンジ・フィー(交換手数料)に対する上限規制も、一つの比較対象として意識されています。キャッシュレスの普及を一時的なブームではなく社会の持続的な仕組みにするためには、決済事業者、消費者、加盟店が公平にコストを分かち合う制度設計への転換が不可欠となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)