今回のニュースのポイント
国土交通省が公表した6月の主要建設資材需給・価格動向調査では、生コンクリートや鋼材、木材など全ての調査対象資材で需給は「均衡」、在庫も「普通」となり、供給不足は見られませんでした。一方で、アスファルト合材や異形棒鋼、H形鋼、型枠用合板、軽油などは価格が「やや上昇」と判定されました。建設資材市場は、資材不足による突発的な価格高騰の局面から、エネルギーや物流など構造的なコスト上昇を反映する新たな段階へ移りつつあることがうかがえます。
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国内の建設事業の円滑な推進を支える基礎資材市場において、供給サイドの混乱による価格決定の構図が根本から変化しつつあります。国土交通省が毎月実施している主要建設資材の需給・価格動向調査の最新結果によると、主要な7資材13品目における市場の需給環境は落ち着きを取り戻しています。過去に新型コロナウイルス禍や世界的な物流停滞がもたらした、いわゆる「ウッドショック」や各種資材の深刻なサプライチェーンの寸断は全体として沈静化をみせています。
6月1日から5日にかけて実施された調査では、需要と供給のバランスを示す需給動向が全13品目で「均衡」の判定となり、現場の事業進捗を左右する在庫状況についても調査対象となったすべての品目で「普通」の基準を満たしています。5段階評価で算出した全国平均の価格動向指数を見ても、セメントが3.26、生コンクリートが3.34、砂や砂利といった骨材各種が3.37前後と、いずれも「横ばい」の圏内に収まっています。物理的な物品の不足によって工事が停滞するという危機的な段階からは、全体として脱しつつある実態をデータは示しています。
しかし、供給能力が正常化し需給が安定しているにもかかわらず、各種資材の価格そのものがかつての水準へ下落する動きは見られません。必要な資材は確実に確保できるものの、以前の価格水準には戻らずに高止まりする傾向が続いています。具体的な個別品目の動きを追うと、舗装材料であるアスファルト合材の新材および再生材は、5段階評価の価格動向指数が全国平均で3.86前後を記録し、前月比でもプラス0.4ポイント前後の上振れをみせながら「やや上昇」と判定されています。
さらに、鉄筋に用いられる異形棒鋼が3.82、建築構造材となるH形鋼が3.79、木材用の型枠用合板が3.69、現場の動力源となる軽油が3.50を記録しています。これらの品目は、いずれも横ばいとやや上昇の境目に位置しており、先月から0.1から0.4ポイント程度指数が上がっている実態を示しています。供給量が需要を満たしているにもかかわらず価格が引き下げられないという、需給だけでは価格を説明しにくい状況がうかがえます。
需給が均衡するなかで価格が高めで推移する主たる要因は、資材の製造や輸送の全般にかかる構造的なコストの上昇にあります。今回「やや上昇」に偏っているアスファルトや鋼材、合板、石油といったエネルギー・素材系の品目は、原油や電力などのエネルギー価格、物流業界における輸送費、製造部門の人件費、外国為替相場の水準といった多層的なコスト要因の影響を直接的に受けやすい特徴があります。したがって、国内の市場における引き合いが平穏で需給が均衡していても、サプライチェーン全体のコスト構造が変われば価格が高止まりしやすくなります。建設資材市場では、「需給だけで価格が決まる時代」から、コスト要因を織り込んだ複雑な価格形成へ移りつつあることが、今回の調査結果から明確に読み取れます。
建設業界を取り巻く経営環境は、価格の乱高下への警戒から、高コスト構造の定着を前提とした長期的な事業運営への対応へと課題の焦点を移しています。2020年から2022年にかけての混乱期における最優先課題は、木材や鉄鋼、半導体の不足にともなう「いかにして資材を確保するか」という物理的な調達能力の有無にありましたが、現在の局面は固定化された高コスト環境への適応へと変化しています。
毎月1日から5日という短い期間で定点観測されるこの国土交通省の調査は、市場の瞬間的な風向きを速報的に捉えるだけでなく、毎月同一の条件下で価格・需給・在庫をそれぞれ5段階で指数化し比較を継続することにより、3つの軸のズレを明確に示す重要な役割を担っています。この月次の定点データを積み重ねていくアプローチこそが、エネルギーや人件費、物流費を反映した新しい均衡点を見極める手がかりとなります。
建設資材市場は、供給不足による混乱から落ち着きを取り戻しつつあります。しかし価格形成の軸は需給から、エネルギー、人件費、物流などの構造的コストへ移り始めています。今後は資材不足への備えだけではなく、高コストを前提とした公共工事や住宅建設、企業の設備投資のあり方が問われる局面に入っていきます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













