今回のニュースのポイント
令和8年度税制改正では、国際課税制度の見直しが行われます。多国籍企業が税率の低い国へ利益を移して税負担を抑える問題に対応するため、OECD・G20で合意された「グローバル・ミニマム課税」への対応を進めます。一方で、米国など独自制度を持つ国との共存ルールや簡素化措置も導入し、税の公平性と企業活動のしやすさの両立を目指します。
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令和8年度税制改正に関連する改正法は2026年3月31日に成立し、同日に公布されました。かつての国際社会において、企業の活動は国内中心であり、基本的にはその国の中だけで課税が完結していました。しかし現在、経済のデジタル化やグローバル化が進展し、本社はA国、開発はB国、販売はC国、利益管理はD国といった、国境を越える複雑な企業活動が一般的となっています。こうした中で、「利益だけを意図的に税率の低い国・地域(タックスヘイブンなど)へ移転させる」という、多国籍企業による租税回避が世界的な課題となっていました。
この課題に対して、OECDおよびG20の「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」では、「2本の柱」からなる国際課税改革が国際合意され、日本でも制度整備が進められてきました。このうち「第2の柱」にあたるのが、年間連結総収入が一定規模以上の多国籍企業グループを対象とした「グローバル・ミニマム課税」です。世界全体で最低15%の税負担を確保するこの仕組みにおいて、日本はこれまでに所得合算ルール(IIR)、軽課税所得ルール(UTPR)、および国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化を進めています。
今回の改正における重要な新機軸が、独自の最低課税制度を運用している米国などの税制との「共存システム」の整備です。世界共通の多国間ルールと米国の独自ルールが重複すると、企業にとっては二重の税負担や申告の混乱が生じるリスクがありました。これに対し、国際的な調整を踏まえ、共存適格国に最終親会社等が所在する場合には所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)の適用を免除する「SbS(Side by Side)セーフ・ハーバー」などが新たに創設されました。これにより、国際的な制度調和を進めつつ、米国制度等との円滑な共存が図られます。
国際的な租税回避を防止する一方で、日本企業の国際競争力を維持・向上させるための「事務負担の軽減」や「手続きの簡素化」も今回の改正の大きな柱です。制度の導入に伴う多国籍企業の計算・申告負担の増加は、海外展開を進める上での懸念材料になりかねません。そこで改正では、既存の暫定的な簡素化措置である「移行期間CbCR(国別報告書)セーフ・ハーバー」の適用期間を1年間延長し、2027年12月末までに開始する会計年度まで適用可能としました。さらに、設備投資や試験研究といった現地での実態を伴う投資活動について、実効税率計算上の影響を緩和する国別実効税率計算の特例(SBTIセーフ・ハーバー)も導入され、実務上の負担を軽減する配慮がなされています。
さらに、これまでの租税回避防止策である「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)」についても、グローバル・ミニマム課税との二重の企業負担を避けるためのバランス調整が行われました。具体的には、解散した部分対象外国関係会社等に関して、解散後の一定期間(特例清算事業年度)は引き続き部分対象外国関係会社等に該当するものとみなして会社単位の合算課税の対象から除外する特例(清算特例)を創設しました。加えて、ペーパー・カンパニー特例の「資産割合要件」について、事業年度終了時に総資産額がゼロである場合には判定を不要とするなど、海外で健全なビジネスを行う日本企業の国際展開を過度に阻害しないよう、実務に即した見直しが行われています。
総じて、令和8年度における国際課税の改正は、単に企業の税金計算の細部を調整するだけのものではありません。デジタル社会において国境を越えて広範囲に活動する巨大企業に対し、「どこで真に価値を生み出し、どこで適切な税負担を行うべきか」という、世界共通の新しい課税秩序を構築する試みです。同時に、日本企業が複雑な事務コストや二重課税に直面することなく、グローバル市場で他国企業と対等に競争できる環境を守るためのものでもあり、今回の改正は「公平な課税の確保」と「日本企業の国際競争力」の両立を緻密に目指す重要なステップであると言えます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













