今回のニュースのポイント
日本とキルギスは、新たな租税協定により二重課税の防止や国際的な租税回避対策を強化します。従来は旧ソ連時代の1986年の日ソ租税条約を引き継いでいましたが、経済環境の変化に対応するため内容を刷新しました。配当・利子・使用料など投資所得への課税ルールを整備し、企業の国際取引や投資を後押しします。
本文
「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とキルギス共和国との間の協定」が、第221回国会において承認されました。一見すると特定の2国間に閉じた専門的な制度変更に見えますが、本協定の刷新は、日本が新興国との投資環境づくりを着実に進めているという、国際経済の動向を示す重要な政策の一環です。国境を越えて活動する企業の海外展開を支援し、適切な課税秩序を構築するための新たな基盤として機能します。
今回の新協定における大きな特徴は、約40年ぶりとなるルールの全面更新にあります。これまで日本とキルギスとの間の税制上の枠組みは、ソ連時代の1986年に締結された旧日ソ租税条約がベースとなっていました。1991年のソ連崩壊後もこの旧条約が引き続き適用されてきましたが、経済のデジタル化やグローバル化が急速に進展した現代の両国の経済関係には、もはやそぐわない内容となっていました。そこで両国政府は2025年10月に改正交渉を開始し、2025年12月19日に現在のビジネス実務に即した最新の協定への署名に至りました。
租税協定の最大の目的は、進出企業が直面する「二重課税」の解消です。海外で活動する企業が現地と日本の双方から重ねて課税されるリスクを排除することで、企業はより安定した経営判断と中長期的な投資計画を立てることが可能になります。今回の見直しにより、両国間の投資・経済交流を一層促進するための法的なインフラが整備された形です。
実務上、企業にとって大きなメリットとなるのが、投資所得(配当、利子、使用料)に対して源泉地国が課すことができる税率の上限(限度税率)の明確化です。今回の協定では、企業などが国境を越えて受け取る投資所得の限度税率が以下のように整備されました。
・配当:一定の保有要件を満たす法人は5%に軽減、その他の場合は10%。
・利子:原則として8%(特定の中央銀行や政府機関等は免税)。
・使用料(知的財産等):一律8%。 こうした明確なルール設定により、進出企業は現地での税負担コストを正確に予測できるようになります。
また、近年の国際税制の潮流に違わず、単なる税負担の軽減だけでなく「条約を悪用した節税」を防ぐための租税回避・脱税対策もセットで組み込まれています。協定には、不当な利益の享受を制限する「主要目的テスト(PPT)」といった濫用防止措置が導入されたほか、税務当局間で課税に必要な情報を交換する仕組みの拡充が盛り込まれました。
今回の日本・キルギス租税協定の刷新は、資源や物流の要衝として近年世界的な関心が高まっている中央アジア地域において、日本企業が安心して事業を展開するための確固たる足場づくりを意味しています。先に法制化が進められた「グローバル・ミニマム課税」のような多国間の一律ルール(第2の柱)がマクロな大枠であるとすれば、今回のような2国間の新租税協定は、新興国市場におけるミクロな障壁を丁寧に取り除くための実効的な仕組みです。国境を越える経済活動において「公平な課税の確保」と「投資の活性化」を両立させ、日本企業の海外展開を支える重要な政策基盤になるといえます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













