調達先も評価対象に 環境省が企業向けネイチャーポジティブ実践ガイドライン策定

2026年07月14日 15:59

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環境省が企業向け「調達におけるネイチャーポジティブ実践ガイドライン」を公表。サプライチェーン全体で自然資本への影響を考慮した調達の重要性を示している。

今回のニュースのポイント

環境省は、企業がサプライチェーン全体で自然環境への影響を考慮した調達を進めるため、「調達におけるネイチャーポジティブ実践ガイドライン」を公表しました。今回のガイドラインは、環境保全だけでなく、原材料の調達リスクや企業価値の維持といった経営課題として自然資本を位置付けていることが特徴です。企業には調達方針の策定やサプライヤー管理、リスク評価などが求められ、今後は「何を作るか」だけでなく「どこから調達するか」も企業評価の重要な要素となりそうです。

本文
 企業活動における生物多様性への配慮は、かつてはボランティアや社会貢献活動の一環として、主にコストやCSR(企業の社会的責任)の文脈で語られがちでした。しかし、環境省が今回策定したガイドラインは、生物多様性の損失をはじめとする自然資本の劣化を、企業経営を直接脅かす経営課題として明確に位置付けています。自然災害の増加や土壌汚染、生態系サービスの低下といった事象は、原材料価格の上昇や調達の困難化、さらにはサプライチェーンの寸断といった物理的リスクを直接引き起こす要因となります。今回の指針は、ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せること)への取り組みを、企業の調達リスク管理そのものとして捉え直した点に大きな特徴があります。

 このガイドラインが企業に迫る構造変化は、環境配慮の評価対象が自社にとどまらず、サプライヤーや原材料の調達先にまで及ぶ点にあります。日本は資源や原材料の多くを国外の自然資本に依存しており、グローバルなバリューチェーン全体での影響把握が欠かせません。ガイドラインでは、自社が取り扱う全コモディティを視野に入れ、調達方針の策定、明確な目標やKPIの設定、サプライチェーン全体におよぶリスクの抽出・評価、そしてトレーサビリティ(追跡可能性)の確保を求めています。これにより、今後は製品の品質や価格だけでなく、その原材料がどこから、どのようなルートで調達されたかという調達プロセスの透明性そのものが企業評価を大きく左右することになります。

 これまで、調達の現場においては価格と品質の安定性が最優先されてきました。しかし今後は、取引先企業が自然環境に対してどのような事業活動を行っているかを見極めることが求められます。ガイドラインでは、調達先のサプライヤーが森林減少や森林劣化を引き起こしていないか、生態系や野生生物の生息地を脅かしていないかを確認するとともに、水資源の利用状況や土壌・大気への汚染物質の排出状況などを把握・確認することを企業の責務として整理しています。万一、調達先の活動に自然資本の損失に寄与するリスクが認められる場合には、単に取引を排除するのではなく、キャパシティビルディング(能力構築)などの協働を通じて、段階的な改善を促す姿勢も求められています。

 今回の実践ガイドラインは、法的拘束力を持つ法令ではありません。しかし、その影響を無視することは困難です。背景には、生物多様性基本法で事業者の責務が位置付けられていることがあります。環境省は今回の指針において、取り組みの対応水準を「事業者の責務として対応が必要な基本事項(べきである)」と「先行対応を推奨する事項(望ましい)」の二つに区分しています。調達方針の提示やサプライチェーンのリスク評価は対応が必要な事項に分類されており、今後はESG(環境・社会・ガバナンス)投資の評価基準や非財務情報の開示要求、さらには欧州をはじめとする海外の厳しい環境規制との整合性を保つ上でも、企業の自発的かつ迅速な対応が強く求められることになります。

 今回のガイドラインは、単なる環境保全の要請ではなく、企業の調達戦略や経営判断のあり方を根本から揺さぶる羅針盤といえます。自然環境への配慮を単なるコスト要因として嫌うのではなく、中長期的な調達の安定性やレジリエンスを高める戦略的投資として位置付けられるかどうかが、これからのグローバル競争における企業競争力を左右する重要な経営課題となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)