AIは「答える」から「手続きを完了する」時代へ 顧客対応で始まる業務変革

2026年07月14日 11:05

ソフトバンクイメージ

AIエージェントは質問への回答だけでなく、返品や契約変更などの手続きまで自律的に実行する。企業の顧客対応は「回答するAI」から「業務を実行するAI」へと進化し始めている。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

ソフトバンクは米Sierraと提携し、AIエージェントを活用した顧客対応サービスの国内展開を始めました。AIは問い合わせに回答するだけでなく、商品の返品手続きなど必要な業務まで自律的に実行します。従来のチャットボットから、業務そのものを担うAIエージェントへと進化が進み、企業の顧客対応や業務のあり方は新たな段階へ入り始めています。

本文
 生成AIの普及を背景に、多くの企業が顧客窓口へのAI活用を進めてきました。しかし、従来の仕組みはあらかじめ用意されたQ&Aに基づき、テキストで「質問に答える」という対話支援の領域にとどまっていました。これに対し、市場では単に対話を行うだけでなく、顧客の目的を理解し、必要な手続きまで実行する「AIエージェント」の導入に向けた動きが本格化しています。AIエージェントは、回答だけでなく、社内システムと連携して必要な手続きまで実行します。情報を提供する段階から、業務そのものを実行する段階へという機能的な進化が、新たな変革を促しています。

 このAIエージェントと従来のチャットボットとの決定的な違いは、エンドツーエンドでの業務完了能力にあります。これまでは、AIが回答を示した後に、顧客自身が特定のページに移動して入力を進めるか、人間のオペレーターがシステムを操作して処理を行う必要がありました。しかし、目標指向型と呼ばれる新しいAIエージェントは、顧客の問い合わせ内容から「返品」や「契約変更」といった最終的な目的を理解し、企業のブランドルールに準拠しながら、裏側の社内システムと連携して各種手続きを最後まで自律的に実行する能力を備えています。

 このような処理プロセスの自動化は、顧客対応の構造を「人間が受ける仕事」から「AIが処理するシステム」へと転換させる契機となります。定型的な問い合わせや複雑な手続きの多くをAIが判断して処理を完了できるようになれば、人間の役割はより高度な判断を要する例外的な案件や、感情的なケアが求められる特殊な顧客対応へと集中することになります。これは、単なる人員削減の議論を超えて、顧客接点における人とテクノロジーの分業体制を根本から再定義する動きといえます。

 この技術の有効性を証明するデータとして、ソフトバンクが実施した国内での実証結果があります。米Sierraとの戦略的パートナーシップ契約に伴い、オンライン専用ブランド「LINEMO」のカスタマーサポートに同システムを導入して検証が行われました。その結果、従来のサービスと比較して、問い合わせ内容に対する解決率は83%から97%へと上昇し、顧客の満足度も74%から93%へと大きく向上したことが確認されました。この定量的ファクトに基づき、今後はグループ企業や国内法人市場での展開が始まり、実ビジネスの場における本格的な検証が進むことになります。

 真に注目すべき構造変化は、こうした実務の自動化が企業の組織構造そのものを変容させていく可能性にあります。顧客対応部門だけでなく、営業やバックオフィス、事務管理といった社内のさまざまな部門にAIエージェントプラットフォームが順次展開されることで、これまで人間が介在していたあらゆる定型実務がシステム的に統合される基盤が整うためです。企業全体のITシステムをAIで刷新する動きと、そのシステム上でAIエージェントが実業務を実行する動きが一本の線で繋がることで、企業運営の自動化に向けた地殻変動が加速しています。

 今後は、カスタマーサポートをはじめとする多様な顧客接点において、AIエージェントが企業の業務ルールやナレッジをどの程度高い信頼性で再現し続けられるかにあります。社内インフラとの連携の深化や、それに伴う新たな人材配置のあり方を含め、企業が「AIを活用する組織」から「AIと人が役割を分担する組織」へと移行する変革の行方が注目されます。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)