JR東日本、水素社会へ本格投資 鉄道・発電・まちづくりを一体展開

2026年07月14日 18:43

今回のニュースのポイント

JR東日本は14日、2050年度のCO2排出量実質ゼロに向け、水素をモビリティ・発電・まちづくりの各分野で一体展開する新たな水素戦略を発表しました。2027年度末には日本初となる営業用水素ハイブリッド電車「HYBARI」の運行を開始するほか、70MPaの高圧水素を活用する次世代車両の開発にも着手します。さらに川崎発電所での水素混焼発電や高輪ゲートウェイシティ等での都市開発まで含めた総合的な水素利用を進める計画で、水素を社会インフラの核として位置付ける長期戦略として注目されます。

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 2050年度のCO2排出量実質ゼロを目指す長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を掲げるJR東日本グループが、環境戦略をさらに加速させるための具体的なロードマップを提示しました。同社が14日に発表した新たな水素戦略は、単に排出ガスを出さない環境配慮型の車両を導入するという個別プロジェクトの枠を超え、自社の強みである鉄道網、自営の発電インフラ、および大規模な都市開発を水素という次世代エネルギーで垂直統合する壮大なインフラ変革の試みです。

 この水素戦略のモビリティ分野における主軸となるのが、2022年3月から実証試験を積み重ねてきた水素ハイブリッド電車「HYBARI」の社会実装です。同車両は燃料電池装置と蓄電池を組み合わせることで走行時にCO2を排出しない特性を持ちますが、試験を通じて車両性能やシステムの安定性が実証されたことから、実用段階への移行が決定しました。試験車両に日本初の営業車両としての改造を施し、2027年度末を目途に鶴見線および南武線の一部区間で実際の営業運転を開始する予定です。

 さらに同社は、この「HYBARI」で蓄積した知見をベースとして、2030年度末の営業運転投入を目指す次世代水素ハイブリッド電車の開発にも着手します。世界初となる70MPaの高圧水素を使用することで、これまでの水素車両の課題であった走行距離をディーゼル車両と同等まで確保し、連続する勾配区間にも対応できる高い走行性能の獲得を目指す計画です。これが実現すれば、電化されていない地方路線を含めた広範囲な線区への展開が可能となり、国内の鉄道分野における脱炭素化を大きく進展させる契機となりそうです。

 今回の発表で最も経済的なインパクトが大きい特徴は、水素の利活用を鉄道車両のみに限定せず、エネルギーサプライチェーンの上流にあたる「発電」や、下流にあたる「都市開発」へと一体的に波及させる点にあります。同社が運用する自営の川崎発電所では、2030年度の水素混焼発電の開始を目指し、水素バリューチェーン推進協議会の「水素1%調達宣言」に第一弾の参画企業として名を連ねました。また、都市開発の面では、軽井沢エリアでの水素ステーション建設や需要創出に加え、大規模複合開発が進むTAKANAWA GATEWAY CITYにおいて、燃料電池トラックや燃料電池ごみ収集車の導入、さらにはまちを支える都市エネルギーの一部に水素を組み込むなど、都市型エネルギーシステムの創出に向けた取り組みが動き出しています。

 こうした巨額のインフラ投資や脱炭素への取り組みを経営判断の仕組みに組み込むため、同社は社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング)の大幅な見直しを決定しました。CO2排出量削減につながる設備投資の判断基準となるこの社内炭素価格を、従来の5,000円/t-CO2から、近年の非化石証書価格の上昇動向を踏まえて約3倍となる15,000円/t-CO2へと引き上げます。これにより、省エネルギー設備やCO2削減効果の高い投資に対する社内評価を大幅に後押しし、経営トップのコミットメントを実務レベルへ自律的に浸透させるガバナンス体制が構築されることになります。

 今回の広範な発表が示しているのは、従来の「交通事業者」という枠組みから、水素を軸とした総合的な持続可能インフラ企業への実質的なビジネスモデルの転換です。グリーントランスフォーメーションが企業の持続可能な成長を左右する最重要テーマとなるなか、自社で発電所を持ち、鉄道を走らせ、まちを開発するという一連の事業ポートフォリオを水素で結ぶ試みは、日本における水素社会の実現性とビジネスとしての持続可能性を占う試金石となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)