今回のニュースのポイント
厚生労働省が公表した最新の「国民生活基礎調査」によると、2024年時点の「子どもの貧困率」は11.0%となり、前回調査(2021年)の11.5%から0.5ポイント低下しました。また、社会全体の所得格差を示す「相対的貧困率」も15.0%と、前回の15.4%から0.4ポイント低下しています。しかし、2025年7月時点の生活意識調査において「生活が苦しい」と答えた世帯は全世帯で55.4%を占め、2022年の51.3%を上回る水準となっています。統計上の貧困率が低下を示す一方で、家計の生活苦を訴える声が根強く残る背景をひも解きます。
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最新の調査結果において、子育て世帯を巡る重要なマクロ指標に改善の動きがみられました。17歳以下を対象とした「子どもの貧困率」は11.0%となり、前回調査に比べて緩やかに低下しています。また、世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる「子どもがいる現役世帯」全体の貧困率をみても、前回の10.6%から9.0%へと低下が確認されました。子どもの貧困率や現役子育て世帯の貧困率は前回調査から低下しており、所得分布上では改善の動きがみられます。
その一方で、家計を取り巻く生活意識をみると、数字の印象とは異なる厳しさが浮かび上がります。自らの暮らしについて「大変苦しい」または「やや苦しい」と答えた世帯の割合は、全世帯で55.4%を記録しました。前年(58.9%)との比較では低下しているものの、2022年の51.3%に比べると高い水準にあり、依然として過半数の世帯が日々の暮らしに余裕を持てていない実態があります。各種世帯別ではさらに厳しい水準にあり、「児童のいる世帯」の61.5%、「母子世帯」にいたっては82.1%が生活の苦しさを訴えており、ファミリー層の生活実感にはなお重い負担感が残っています。
こうした「貧困率の低下」と「生活意識の負担感」が並存する背景を理解するには、まず「相対的貧困率」という統計の定義を確認する必要があります。相対的貧困率とは、等価可処分所得の中央値の半分を「貧困線」とし、それを下回る人の割合を示す統計です。つまり、これは社会全体の所得分布のバランスを示す相対的な指標であり、個々の家庭が実際に購入できる物資の量や、具体的な物価の水準そのものを直接測る物差しではありません。そのため、全体のバランスとして所得分布の偏りが縮小し、統計上の貧困率が下がったとしても、それがただちに各家庭の生活のゆとりを意味するわけではないという側面があります。
所得が一定水準を維持、あるいは底上げされたとしても、人々の生活実感を左右する大きな要因となるのが近年の物価上昇の影響です。食料品や電気・ガス代、日用品といった日常生活費の負担が増していくなかでは、名目上の所得が多少増加して貧困線を上回ったとしても、実際の家計のやり繰りは厳しさを増すことになります。今回の調査でも、所得は2024年の1年間の実績であるのに対し、生活意識は2025年7月時点という異なるタイミングでの回答であり、物価変動の局面が進行するなかで、日常生活費への負担感が人々の意識へより強く投影されている可能性が考えられます。
今回の結果が示すのは、貧困率という特定のマクロ指標が好転しているからといって、子育て世帯や一般家計の負担軽減が十分に達成されたと判断することには限界があるという現実です。貧困率などの指標の改善だけでなく、物価変動のスピードに応じた実質的な購買力の維持や、世帯人数に応じた日々の支出への配慮など、より多角的な視点から家計の実態を捉えることが求められます。
最新の国民生活基礎調査は、子どもの貧困率などの指標が改善をみせる一方で、半数を超える世帯がなおも生活に苦しさを覚えている実態を映し出しました。マクロな分布指標である「貧困率」だけでは、物価高に直面する個々の暮らしの経済的なゆとりを測りきることはできません。統計の数字が示す一側面の改善に一喜一憂するのではなく、世帯の実態や日常生活費の負担に即した多角的な視点を持つことが、これからの家計政策や市場動向を検討する上で重要な論点となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













