高市総理「非核三原則を堅持」 安保三文書改定へ、核禁条約参加は明言せず

2026年08月10日 07:22

57500_ext_8_1

長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で献花する高市総理=2026年8月9日、長崎市(写真:首相官邸ホームページより)

今回のニュースのポイント

高市総理は9日、長崎市で記者会見し、安全保障関連3文書の改定を年末に向けて検討する中でも、政府として非核三原則を政策上の方針として堅持する姿勢に「変わりはない」と明言しました。一方、核兵器禁止条約については「核兵器のない世界への出口ともなり得る重要な条約」と評価しながら、11月30日から開かれる同条約の第1回運用検討会議への対応について具体的な方針は示しませんでした。また、被爆体験者への追加救済策については既存の医療費助成を着実に実施する方針を再確認するにとどまりました。

本文
 高市総理は9日、長崎市内で記者会見を行い、年末に向けた安全保障関連3文書の改定議論が進む中においても、政府として非核三原則を堅持する方針を表明しました。記者から安全保障環境の変化に伴う影響と非核三原則の扱いについて問われた高市総理は、「政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持しているということに変わりはございません」と明言しました。一方で、三文書改定の具体的な記載内容については「年末に向けて検討を進めているところであり、書きぶりそのものについて予断することは差し控える」とし、文書の具体的な表現についての言及は避けつつも、従来の基本方針は変わらない旨を明確にしました。

 非核三原則は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする日本政府の基本方針で、1967年に佐藤栄作首相(当時)が表明しました。以来、日本政府は非核三原則を基本方針として掲げてきました。しかし、日本を取り巻く安全保障環境が複雑化する中、国際的な枠組みである「核兵器不拡散条約(NPT)」や「核兵器禁止条約(TPNW)」と、この基本方針をどのように位置付けていくかが改めて問われています。

 日本政府が核軍縮外交の柱と位置付けているのがNPT体制です。高市総理は「私自身も核兵器不拡散条約の締約国であるということを非常に重く考えている」と述べ、同条約の遵守を強調しました。NPTは、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスという「5つの核兵器国」と非核兵器国の双方が参加する国際的枠組みであり、核不拡散、核軍縮、原子力の平和利用を柱としています。日本政府がNPTを軸とするのは、核兵器国と非核兵器国の双方が参加する枠組みの下で「現実的かつ実践的な取組を進める」という立場をとっているためです。

 一方で、核兵器禁止条約へのアプローチには慎重な姿勢が維持されています。高市総理は同条約について「核兵器のない世界への出口ともなり得る重要な条約である」との認識を示しました。しかし、11月30日から12月4日までニューヨーク国連本部で開かれる同条約の第1回運用検討会議への対応については、「国際社会の動向や厳しさを増す我が国周辺の地域情勢を見極めながら、我が国の安全保障の確保と核軍縮の実質的な進展のために何が真に効果的かという観点から検討する必要がある」と述べるにとどめ、参加への明言は避けました。

 日本政府は「核兵器のない世界」の実現を掲げる一方、安全保障面では米国の拡大抑止を重視しています。高市総理も今回、核兵器禁止条約を「重要な条約」と評価しながら、日本周辺の地域情勢や安全保障の確保、核軍縮の実質的な進展を踏まえて対応を検討する考えを示しました。唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」の実現を目指す立場と、安全保障環境への対応をどのように両立させるか、政府は難しい政策判断を迫られています。

 長崎・広島の地で被爆者と直接面会した高市総理は、「長崎、広島の地で起きた悲劇は、決して繰り返させてはならないと改めて固く決意した」と語りました。被爆地からは核兵器の廃絶や禁止条約への参加を求める強い声が上がる一方、政府は安全保障上の観点も含めた判断を重ねており、双方の視点が交錯する局面が示されました。

 また、長崎大学の研究グループが提示した原爆の放射性微粒子による内部被ばくの可能性に関する論文については、厚生労働省から報告を受けているとしつつも「現在は係争中の訴訟に関するものでもあるため、お答えは差し控える」とコメントを回避しました。国が指定した被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」への救済策については、2024年12月から開始された幅広い一般疾病に対する医療費助成に触れ、「こうした支援を着実に実施してまいりたい」と述べるにとどまり、新たな救済枠組みの創設などについての言及はありませんでした。

 非核三原則の維持を再確認した今回の会見は、今後の安全保障政策の節目に向けた足固めとも言えます。11月30日に開幕する核兵器禁止条約の第1回運用検討会議に向けた政府の具体的対応、拡大抑止との関係、そして年末に向けて進む安保三文書の改定で、政府が安全保障政策と核軍縮をどのように位置付けるのかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)