空気清浄機市場の前年比39%増は、果たして歓迎すべきなのか

2013年03月11日 16:54

 昨年よりも飛散量が多いと予測されている花粉に黄砂、そしてPM2.5と、麗らかさとは対極の息苦しい春を迎えている今年。例年以上に空気清浄機市場の動きが活発化している。

 空気清浄機市場は、2007年度から2010年度にかけて市場を拡大し、以降安定した需要を維持。特に2009年のインフルエンザ流行をきっかけに、空気清浄機をウイルスや風邪の予防対策として使用する訴求が強まり、2009年度・2010年度は二桁成長を記録していた。こうした中、ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンが発表した、家電量販店における空気清浄機の販売動向によると、2012年度の空気清浄機販売は多くの月で前年を下回って推移していたものの、2013年2月は数量前年比39%増と大幅なプラス成長に。過去2年は、インフルエンザ対策などから12月、1月に需要ピークを迎え、2月は販売が落ち着く傾向にあったが、2013年2月は1月を上回る結果となっている。特に飛来が心配される近畿以西地区では、2月の数量前年比は54%増と全国を上回る伸長を見せており、1月21日週以降、週を追うごとに販売が増加。3月も高い需要が続くと予想されている。

 こうした傾向を受けてか、例年であれば市場の落ちつく現在でも空気清浄機の新製品が次々と発表されている。例えば、システムトークスが、サイズが限りなくゼロに近いマイナスイオンでPM2.5物質を吸着し、除去する形態型空気清浄機を発売。イオンは遠くまで飛ぶことができず、通常は20~30cm、ファンで飛ばしても40~50cmしか飛ばないという。また、イオンは1秒も経たないうちに消滅する。その為、同社の新製品は首かけ式を採用し、目、鼻、口がイオンの効果範囲に入るように設計されている。さらに除菌力がないため、人間の身体に必要な常在菌も影響を受けることがなく、健康被害の心配もないという。その他、住友スリーエムが、部屋の給気口やエアコンに取り付けるだけで手軽に空気清浄機能が得られる「フィルタレット 空気清浄フィルター 給気口用」と「フィルタレット 空気清浄フィルター エアコン用」を発売するなど、周辺市場も発生・拡大しているようである。

 景気が好感触で推移しているとはいえ、依然として安定的な回復基調にあるとは言えない現状で、こうした好調な市場があることは歓迎すべきことなのかもしれない。しかし、その原因を辿れば、手放しで歓迎できるものでないことは明白である。殊、黄砂やPM2.5に関してはそうであろう。日本国内の市場は縮小に向かう方が、健全な環境に戻ったとことを示すものとして、歓迎すべき状態のかもしれない。(編集担当:井畑学)