通電時の抵抗など物性の理論限界値に到達しつつあるシリコン(Si)に代わり、次世代パワー半導体の材料として炭化ケイ素(SiC)と並んで注目を集めている窒化ガリウム(GaN)。その高環境耐性からエネルギー密度が高い分野に向いているSiCに対し、GaNは速いスイッチングに特徴がある。その為、発電設備や送電時の電力変換等にはSiCを、電気製品等にはGaNを用いるといった具合で普及が進められている。
こうした中、シャープ<6753>が、電気製品の省エネ化に貢献する定格電圧600VのGaNパワートランジスタを開発したと発表。4月15日からサンプル出荷を開始し、今年中に福山工場の6インチラインで生産開始を目指すという。
GaNは、LED照明の中心部材である青色LED用材として産業化されているもの。シャープは、長年培ってきたLEDに代表される化合物半導体技術とLSIプロセス技術とを融合させ、本製品の開発に成功したとのこと。従来のSiパワートランジスタに比べて通電時やスイッチ動作時の電力ロスが少ないため省エネ化を実現。また、高速のスイッチ動作が可能となるため、コイルなど周辺部品の小型・軽量化も可能とする製品となっている。同社は、本デバイスに周辺部品を加えたモジュールの事業展開も図るとのこと。
グローバルインフォメーションの調査によると、GaNを利用したパワーデバイスの売上高は2011年には250万ドル弱であったものが、今年は生産量が増加し、新規参入の動きも活発化して、5000万ドルにも達する見通しだという。パワーデバイスとしてのGaN製品は市場が立ちあがったばかりであるだけに、今イニシアティブを握ることができれば、大きな事業となるであろう。屋台骨の揺らいでいるシャープであるが、今後の同社を支える柱の一つとなり得るであろうか。今後の動向は注目に値するであろう。(編集担当:井畑学)