日本車輌製造と住友商事は1月、台湾の鉄路管理局から、車体傾斜(振り子)式電車136両を受注したと発表した。受注金額は約300億円。東部幹線(主に台北-花蓮間)の特急電車として使用される予定で、2012年から14年にかけて納入される。
台湾では、大規模なインフラ整備計画の一環として、2009年から2016年までの8年間で交通ネットワークの整備に1兆4523億台湾元(約4兆円)を投資する予定で、台北、高雄、台中など都市内および都市間を結ぶ鉄道網拡充のための投資が活発化している。今回投入される電車は、日本車両が開発した車体傾斜システムを採用。いわゆる振子電車と呼ばれるタイプで、急カーブでも従来の車両よりも早い速度で走行することができると共に、乗客に不快な遠心力を感じさせずに快適な乗り心地を提供できるという。流線型のスタイルを持つアルミニウム車体で、8両を1編成とし、17編成の合計136両で構成されている。
また、国際的な最新基準の火災対策を施し、車内はバリアフリーの設備や幼児連れの乗客にも優しい設計になっている。地形的な理由もあり、交通網の整備が西部海岸に比べてやや遅れていると言われる東部海岸に、この新型特急電車が大量に投入されることで同地域の輸送力が向上し、台湾経済の活性化に繋がることも期待されるだろう。
一方、川崎重工業も鉄道車両事業の飛躍を狙っている。温室効果ガス削減に向けた世界的な環境対応の潮流と、都市化の進展に伴う新興国の旺盛なインフラ投資を追い風に米カリフォルニア高速鉄道や、中国を主としたアジアの高速鉄道市場など、海外で受注攻勢を強めている。車両部門の売上高の目標は2020年度には3000億円に引き上げる予定。その拡大戦略のひとつが、2008年から開発に取り組んできた新型高速車両「efSET」だ。
「efSET」はいわば同社が新幹線車両の設計・製造の豊富な経験を活かして開発した世界戦略車。具体的な案件ごとに対応してきた従来の車両開発方式とは一線を画し、高速鉄道の国際競争を前提に、新幹線車両の設計で培ってきた技術力を結集して開発している。海外市場のニーズを満たすため、運転速度は 8両編成で営業最高時速は350km、乗車定員は575名前後に達するという。