軽自動車のターゲット層を絞る自動車メーカーの戦略

2011年02月21日 11:00

110219_033_1

ユーザーの実に66%が女性という軽自動車。安くて高性能、そしてスタイリッシュなデザインに高い居住性を持ち、もうセカンドカーとは呼べない所まできている。※写真は1月に軽自動車の販売台数で1位を獲得したダイハツの「ムーヴ」(カスタムRS)。

 その外観からは想像できないほどの「居住性の高さ」を持ち、「低燃費」に「税金の安さ」など、財布にも優しい軽自動車。歴史を紐解いてみると、規格が制定されてから過去に大きな改革が何度か行われている。排気量が4サイクル車、2サイクル車共に360cc以下に統一された1955年、全長が3.20m、全幅が1.40m、排気量が550cc以下に改定された1976年、全長が3.30m、排気量が660cc以下に改定された1990年、そして現在の規格となる全長3.40m、全幅1.48mにアップサイジングされ、普通車と同じ安全衝突基準が採用された1998年(排気量は660cc以下のまま)、というような変遷を辿っている。

 (財)自動車検査登録情報協会が出している「自動車保有車両数」によると、昨年の3月現在で、軽自動車の保有比率は35.5%まで伸びている。保有台数は景気に左右されことなく、着実に右肩上がりで増加してきており、現在2600万台以上の軽自動車が存在している。

 軽自動車が選ばれる理由としてはまず「燃費の良さ」があげられる。軽自動車の平均燃費は20.9km/リットルで、乗用車全体の平均燃費より3km/リットル程良い。(2009年度データ※軽自動車メーカー調べ)これも、トヨタ 『プリウス』などHVが含まれている数値なので、それがなければさらに差は広がっている。次に「税金の安さ」だが、エコカー減税導入後は自動車税の開きは少なくなった(軽自動車は減額がない)が、7200円という金額が消費者にとって魅力であることは間違いない。「車両価格の安さ」に関しては、コンパクトカーなどをはじめとする低価格普通車の台頭もあり、差がなくなってきてはいるものの、やはり全般的には「安い(この価格で)」というイメージに「高性能」、「スタイリッシュなデザイン」「高い居住性」など付加価値が付いての魅力ということになるだろう。

 軽自動車のユーザーに目を移して見ると、実に66%が女性((社)日本自動車工業会調べ※2010年3月)というのも特徴だ。また、リピーターを含む高齢者の買い替え希望車種でも約半数が軽自動車(高齢者にやさしい自動車開発推進知事連合調べ)を占め、1993年から2009年の間に60歳以上のユーザーが約4倍に増加((社)日本自動車工業会※2010年3月データ)している。そして、全国の軽自動車数の約半数が10万人未満の市町村での保有((社)全軽自協※2010年3月データ)となっており、鉄道営業キロが少ないエリアは普及率も高く、一家に1台(1位の鳥取県は100世帯当り97.6台)がほぼ常識になっているといっても過言ではない。

 そのようななかダイハツが全国のディーラーで行っている「ダイハツ カフェ」プロジェクトは、女性ユーザーの多い軽自動車の観点から始まったもので、女性が1人でも入りやすい店舗づくりを目指し、2002年に立ち上げられた。人気のスイーツでもてなし、子供連れのユーザーはキッズコーナーの傍で商談を行い、常駐の女性スタッフが対応するなど、女性にとって、居心地の良い空間を提供する事を約束事として運営されている。また、ディーラー間での競争意識を高め、サービス向上に繋げるために、良い評判のディーラーを社内報などで積極的に紹介する。「今では、女性をメインに考え、各ディーラーが様々なイベントや店づくりをすることは珍しくないが、当時は女性のユーザー比率が高いダイハツがやらねばという使命感もあり、他店に先駆けこのような取り組みを始めた」と関係者は語る。

 標準装備の豪華さや高性能な作りなど、普通車と遜色のない要素を持ち、なおかつ低燃費、税金の安さなど、高い経済性を併せ持つ現代の軽自動車。データにも、もちろん良さは反映されているが、各メーカーはその裏で、特徴を生かしたターゲット層へ向けてのプロモーションも重要と考えさまざまな戦略を模索している。